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ひ、広い…

シンドバッドさんに連れられて王宮に入る。長い廊下のレッドカーペットを歩いた。
私達が泊まっていたホテルも十分 豪華絢爛だったけど、やっぱり王宮は格が違う。
高い天井と重厚な造りに目移りした。
しばらくしてから、廊下の先に玉座が見えた。左右均等に兵士が立っている。



「…ハァッ…シンドバッドおじさんでしな、このウワサを流したのは」



直接 見ていいのか迷ったが、好奇心には勝てず、顔を上げた。



『…………』



開いた口が塞がらない、というのはまさにこのことだ。
見上げた先には…その…丸くて小さい人がいた。その隣には真逆の細くて長い人がいる。
え!?この人がアリババくんのお兄さん!?マジで!?全然似てないじゃん!!
いやいやいや!これはない!ないわ!!そりゃ国民もアリババくんに味方したくなるわ!!
なんて、不謹慎なことを考えてしまった。



「僕は"霧の団"捕獲をたのんだだけでし。この騒ぎ、どうしてくれるんでし」

「話は兄弟同士でつけてくれ。俺は、内政干渉はしない主義だ」

「もう散々ちょっかい出しといて何いってるでし!!」



た、確かに…!



「さぁ、話せアリババ王子よ。言いたいことが沢山あるんだろ?」

「………….」



シンドバッドさんに背中を押されたアリババくんが私を見た。
私は一瞬首を傾げたが、緊張を解すために笑って頷く。
頑張れ、アリババくん。



「アブマド兄さん…知ってると思うけど…宝物庫の事件は俺のせいだ…」



あの夜、盗み聞きしたアリババくんの話を思い出す。
それは彼の中で、決して償えるものではない過ち。



「父上が亡くなったのも…俺が原因も同然だ…あの時…自分は消えない罪を犯したと思ってる…」



でも、なぜ"霧の団"が宝物庫を襲ったのか?なぜ今、みんなが王宮に押し寄せているのか?



「考えてくれ!あんたの国民の気持ちを!」



けれど彼は戦おうとしている。消えることのない罪と。そして、自分より遥かに大きなものと。

王宮の外から、国民の声が聞こえる。
ここにいるみんなが、アリババくんに希望を与えられた人達だ。



「この国の、国王たるあんたの力で、国民の生活をこれからは全力で守ると約束してくれ!
そうすれば、俺は"霧の団"を解散する!」

「…………」



ス、とアブマドが持っていたステッキを動かした。それを合図に、左右にいた兵士が槍でアリババくんを取り押さえる。



「!?」

『ちょっと何して「言いたいことはそれだけか」

「待てよ!!約束は…」

「無礼ぞ」



空気が凍る。
アブマドは、私達を見下ろして続けた。



「下賊の者が、王族に語り掛けるは無礼であるぞ」



な、何を言い出すんだ こいつは…
アリババくんと私は思わず固まってしまう。



「余は第二十三代バルバッド王国 国王アブマド・サルージャ。下賊の者と語らう口を持たぬ」



やっぱりこいつろくでもない奴だ!
ちょっとシンドバッドさん何とか言ってやってよ!
という気持ちを込めて隣のシンドバッドさんを見たが、黙ったままアブマドを見ているだけだった。
この人何なの!?何のためにここにいるわけ!?
こういう時のためじゃないの!?



「スラムの拾い子を、弟などと思うたことはない。そちの首、シンドリア国王殿の庇護なくば、とうに飛んでいることを忘れるな」

「…!」

「下がれ。予は気分が悪い…王宮の外にウジが沢山湧いてて…」



豪華な家具と、宝石に囲まれて、何不自由ない暮らしはそれはそれは楽しかったに違いない。
そのしわ寄せが誰にいくかなんて、きっと考えたこともないんだろう。



「ふざけるな!!!」



ビリビリ!と王宮にアリババくんの声が響く。



「自分の国民をそんな風にぬかすお前に!!王の資格なんてない!!絶対にない!!」



ここにいる人達は、本当にこの国王が正しいと思っているんだろうか。
もしそうなら、本当に救いようのない国だ。



「おや、これは何の騒ぎですか?アブマド王よ?」



奥から布を被った男が一人、ゆっくりと歩いて来た。



ざわ、



『…?』



その姿を見た瞬間、胸の奥が微かにざわついた。

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