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マスルールくんがカシムを捕らえた。シンドバッドさんは持っていた剣を抜き、アリババくんに向ける。



「さあ、君も剣を抜きたまえ!!大将同士で決着をつけようじゃないか」



え…戦うの?シンドバッドさんとアリババくんが?
確かにそれが一番手っ取り早いかもしれない。だけど、アリババくんとシンドバッドさん…どちらが強いかなんて、なんとなく分かる。



「なんなら出せばいい。"攻略者"なんだろう!?」

「待ってください アリババさんは…」



モルちゃんが止めに入ろうとしたが、ジャーファルさん手を前に出して止める。
慌ててモルちゃんはアラジンを見るが、アラジンは変わらずジッとシンドバッドさんを見ていた。



「アリババ逃げろ!!逃げてくれ!!おい、野郎ども!俺たちの頭領を逃がすんだ!!」



カシムが叫ぶ。
周りにいた仲間達は戸惑ってお互い顔を見合わせるだけだった。
…このままだと完全にシンドバッドさんの勝ちだ。アリババくんが捕まってしまう。
そうなったらアリババくんはどうなるんだろう。牢屋に入れられる…とか?



「ほお、大将を逃がすか。それも一つの判断だ。どうする?アリババ君、一旦逃げるか。
だがどうせ"霧の団"は終わりだ。実権はそこの男が握っていたんだろう!?」

「くっ!」



でもそうしたらアラジンとの約束は?また一緒に旅をするって約束は、どうなるの?



「助けて」



……え?



「まあいい、アリババ君。逃げたければ逃げればいいさ。考えてみれば、君はこいつらとは"違う人間"だものな」



今、声が…
きょろきょろと辺りを見渡すが、誰も反応はしていない。
………気のせい?



「彼らは"スラム街の人間"。君は表面上は仲間のふりをしていても、実はそうじゃないだろう?君と彼らは違う…
だって君は、王子様だ「黙れ!!!!」



ピィイイ

周りのルフが騒ぎ出す。



「知った風な口きくんじゃねぇ!俺とこいつらに何一つ違いなんてねぇ!!」



この感じ、あの時と同じだ。
アリババくんの剣から、あの炎が出た時と同じ、



「その絆を、バカにすんじゃねぇー!!」



アリババくんは胸から剣を抜いて、昨日と同じ呪文を唱えた。
瞬く間に光が剣へと集まり、光から炎へ変わる。



『お、落ち着いてアリババくん!』



このままじゃ昨日みたいに周りまで燃えてしまう。
アリババくんを止めようと一歩踏み出した。その時だった。



「助けて」



足を止める。さっきと同じ声で、今度は確かに聞こえた。
ピィ、と私の金色のルフが羽ばたく。



「お願い、助けて」



今にも泣きそうな女の人の声。
咄嗟に耳を塞いだけれど、意味はなかった。
脳に直接響いてくるような、そんな感覚。



『……っ』

「…リホさん?」



ジャーファルさんが私を呼んだ気がした。
ガキィン!という剣同士がぶつかり合う音で、よく聞こえない。



「あの子たちを、助けて」



「大丈夫ですか?リホさん?」



止めなくちゃいけない、彼らを、早く、



"助けなくちゃ"


どくん、



「リホさん!!」



気がついた時にはかけ出していた。
私はそのままシンドバッドさんと向き合うアリババくんへ手を伸ばす。

ピィイイ!!

ざわめいたのは、私のルフだ。



「…なっ、」

「リホ やめるんだ!」



シンドバッドさんを無視して、炎を纏うアリババくんを抱きしめる。
何故 こんなことをしてるんだろう。分からない。
分からないけど 身体が、勝手に、



「お願い、もう、」



『"もうやめて。アリババ"』



どっくん、



心臓が大きく跳ねる。
する、と抱きしめていた腕から力が抜けた。
意識が、遠のいていく。



「───あさん?」



アリババくんが私じゃない、誰かを呼んだ。視界の端で白いルフが飛んで行く。



「リホおねえさん!!」



瞼を閉じる瞬間、アラジンの声が聞こえた。





(あたたかくて優しい、なのにどうして悲しいの)

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