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『………何やってるんですか?』

「何って…見れば分かるだろう」



壁にコップのような物をあてて、耳をすませた。
ここはシンドバッドさんの部屋だから怪しまれる可能性はないけど、大の大人がみっともないようが気もする。
盗み聞きする気だ この人!



「君の分もあるぞ」

『…捕まえないんですか?』



私はてっきり、教えてしまったらアリババくんを捕まえに行くと思っていた。


「そうですよ シン。私達の目的を忘れたわけではないですよね?」

「捕まえるさ。真実を知ってからね」

『真実?』

「"アリババ"という名は…聞き覚えがあるんだ」



私は疑問に思いながら壁に耳をあてた。
何やかんやでやっぱり私も気になる。

そして、知ることになるのだ。
アリババくんが何を思い、何をして過ごしてきたのかを。





















『アリババくんが王子…』



アリババくんの話を一通り聞いて彼から聞いた事実を頭で整理する。
アリババくんが実は先王の息子だったなんて…
カシムって子はスラムにいた時の親友なんだ。



ガシャーン!!



急に上から物音がした。
シンドバッドさんは驚いて壁紙から耳を離す。



「な、なんだぁ 上からでかい音が…」



シンドバッドさんがそう言った瞬間、今度ジャーファルさんが何かに反応する。



「シン、後ろ!」



ガシャン!

上からした物音と同じ音。けれど音はさっきよりも大きい。
それはシンドバッドさんの後ろの壁が壊された音だった。

な、何なの!?



『し、シンドバッドさん』

「リホ、俺たちから離れないように」



声を出さずに頷く。
壊された壁からはぞろぞろと柄の悪そうな人達が入ってきた。
……この人達、もしかして…



「なんなんだ?こいつらは…」

「よくも俺らの頭をさらってくれたな」


剣をギラつかせて威嚇する男。
やっぱり"霧の団"だ。アリババくんを取り戻しにきたのか。
上のアラジン達は大丈夫かな…
なんて、他人の心配をする余裕はすぐに無くなった。



「やれぇ!!」


ドドドドド!!

男が上げた声を合図に、構えてた弓を放つ。数えきれないほどの弓がこちらに向かって飛んでくる。
ちょ、ちょっとちょっと!!!



『あぶっ…!?』



パンッ

思わず目を瞑ったが、衝撃はない。
見ると、さっきまで横になっていたテーブルがバリアーになっていた。支えているのはマスルールくん。
えええええ!?そんなのアリ!?結構デカいよそれ!!



「あの机 大理石だぞ!?あの男バケモンか!?」



驚いていられるのも束の間、次はジャーファルさんがロープを操り男達の動きを封じる。
その間にシンドバッドさんが剣を持つ男に向かい合った。



ガキィン!!



刃物が擦れ合う音が響く。
…やばい。これじゃホテルにいる関係ない人まで巻き込んでしまう。
それに…カシムの姿が見当たらない。きっとアリババくんのところにいるんだ。
上に行こうと一歩踏み出す。と、身体が宙に浮いた。

……え?



「危ないっすよ」



私の腰にはマスルールくんの腕。つまり片手で抱き上げれている状態だ。
左では敵を殴り、右では私を持ち上げる。
き、器用すぎる…



「シン!これではキリがありません!」

「アリババ君を探しに来たのか。…マスルール!」

「はい」

「屋上に行くぞ!ここでは狭すぎる!」

「了解」



マスルールくんは私を掴む腕の力を強めた。
不思議に思って彼の顔を見ると、相変わらず無表情で。



「このまま上に突っ込むんで、頭伏せておいた方がいいっすよ」



何そのトンデモ発言。
私は天井を見てから、もう一度マスルールくんを見た。



『冗談?』

「自分、冗談苦手なんで」



ですよねー。
私は諦めてマスルールくんの腕にしがみ付いた。マスルールくんはそれを確認すると、トーントーン と地面を蹴る。



「…いきます」



ぐん、とモルちゃんに持ち上げられた時と同じ感覚が私を襲う。
違うのは何かが勢いよく砕ける音だけだった。

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