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しばらくして、モルちゃんがシンドバッドさん達の方の様子を聞きに行った。
戻ってくるのを待ってる間、段々と霧が深まってくる。



『すごい霧…ねえアラジン、』



…アラジン?
隣を見ると、さっきまでいたアラジンがいない。
えっ!?いつの間に!?



『アラジン!?どこ!?』



ダメだ、霧が深すぎて前もまともに見えない…



『ケホッ』



何、この霧…
なんか頭がくらくらして、



「リホさん!」

『モルちゃん…?』

「こっちです!」

『おわっ!?』



急に持ち上げられて咄嗟にモルちゃんの頭にしがみついた。
モルちゃんはたいして気にしてないようで、そのまま地面を蹴る。



「しっかり掴まってください」

『…っ!』


重力に逆らう何とも言えない感覚に声がでない。
けれどそれは一瞬で、気が付けば私はモルちゃんと屋根の上にいた。
下を見ると、さっきまでいた警備兵が何もいないところに向けて剣を振っている。



『どうなってんの…?』

「彼らは、幻覚に惑わされているようですね」

『!…ジャーファルさん!』


振り向くと、月をバックにしたジャーファルさんが立っていた。
いつからそこに…


「"ファナリス"は鼻がいいから気付いたんですね。リホさんも無事で良かった」

『あの、幻覚って?』

「この霧、かすかに赤い…麻痺毒性の植物にも似た臭いがします」



麻痺…毒!?
な、なんて恐ろしい!ちょっと吸っちゃったよ…!



「これは人間の技ではない。例の"不思議な力"なのでしょう。
…だから、私たちの標的"霧の団"はこの霧の発生源にいますよ」



ジャーファルさんの指差す先に、霧が一層深い場所があった。



『モルちゃん』

「…はい、行きましょう!」






















「リホさんは少しここで待っていてください」



霧の団が見える距離に迫った。
建物の陰に隠れて、ジャーファルさんが私に言う。



『え!でも、』

「危なくなったら逃げる、そういう約束でしたよね?」

『…………』

「いざという時、貴女にはシンに助けを呼んでもらうことになります。そのためにも、ここにいてください」



…ジャーファルさんは人の扱いが上手い。
そんな子供に言い聞かせるような言い方されちゃ、逆らえないじゃん。
私は頷いて、二人を見送る。
とりあえず様子を見ることにした。



「!?なんだ!?国軍か!?」

「いいえ、この国の者ではありませんが…
わけあって、捕らえさせてもらいます。」



ジャーファルさんが屋敷へ入ろうとした霧の団を赤い紐のようなもので捕らえる。
…す、すごい!どうなってんのアレ!
よっしゃ!とガッツポーズしたのも束の間。
次は黒い霧がジャーファルさんにまとわり付く。



ズシッ



「!?」



まるで、霧が何十キロもあるみたいに地面にのめり込む。
ジャーファルさんもそれに押し潰されるように地面にしゃがみ込んでしまった。
ちょっとちょっとちょっと!!頭がついていかないんだけど!
何で!?何で霧があんなことになるの!?
これも"不思議な力"!?



「見たところ国軍じゃなさそうだが…仲間を離してもらおうか!」



黒い霧の中から出てきた、どこかで見た少年。
どうやら霧は少年が持っている剣から出ているみたいだ。



「カシム!カシムの本隊が来たぞ!!」



カシム…
あ!思い出した!昼間、怪傑アリババと一緒にいた子だ!



「ざまあみろ!!鉛より重いカシムの黒い霧に掴まって、一歩たりとも動けた奴はいねーぜ!」



鉛より重い!?そんなのアリ!?



「カシム、やべえのがそっちに行ったそ!!」

「もう一匹いたのか!!」



モルちゃんがカシムに向かって駆け抜けた。
でも、黒い霧が彼女を包む方が早かった。モルちゃんの足が、地面にめり込む。
それでも動こうとしたモルちゃんを、カシムは霧の量を増やしてねじ伏せた。



「あう」



ズシャッと地面が割れる。

こ、これは緊急事態だ!
すぐシンドバッドさんを呼びに…



『…………』



でも、その間に二人がどうにかなっちゃったら…
けど私が出ていっても何も…



『…っ!』



……ええい!考えてる場合じゃない!!



『モルちゃん!ジャーファルさん!』

「リホさん!来ては駄目だ!!」



ごめんジャーファルさん!大人しくしてるなんてやっぱ無理!
私は陰から飛び出して、モルちゃんの方へ駆け寄った。

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