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「アラジン…君も"マギ"なのか…!?」
あれ以上食堂を騒がせるわけにも行かないので場所を変えた。
シンさんは驚いてアラジンを見る。
あれ、君もってことは…
「君"も"?おじさん、他にも"マギ"を知っているのかい?」
"マギ"のことは私もアラジンに少し教えてもらった。
昔話に出てくる"王の選定者"…それがマギ。アラジンは自分がそのマギかもしれないと言っていた。
アラジンもアラジンでマギが具体的に何なのかよく分からないらしい。
…うん、それなら私も分かるわけないな、と思っていたけど。
「ああ…知っているとも。別に仲良しというワケではないがね…」
ウーゴくんを撫でながらシンさんが気まずそうに返した。
え?マギって何人もいるもんなの?
てっきりアラジンだけかと思ってた。
「おじさんって何者なの?」
『…確かに。商人にしては物知りな気が…そういうものなんですか?』
「そうか…君が"マギ"なら明かそう。今まで隠していて悪かったね」
一拍置いて、シンさんは続けた。
「俺は…"シンドバッド"さ」
「『……………』」
いや、
そんなドヤアみたいな顔されても。
あの…え?…"シン"じゃなくて"シンドバッド"ってだけ?
そりゃシンドバッドの方がよく聞く名前だけどさ。
アラジンと一緒に首を傾げると、シンさん…もとい、シンドバッドさんが驚く。
「し、知らないの?」
「どこかで聞いた…ような気がするよ…?」
シンドバッドって何かの物語に出てくる名前だよね。何だっけ?
と、いっても聞いたことあるのは元の世界にいた時で、ここで思い出したって意味ないか。
「リホも聞いたことくらいあるだろう!?」
『や…知らないです』
「思い出してごらんよ!!"シンドバッド"の伝説を…」
ホラホラ!と促されても私は思い出せない。
思い出すどころか知らないからね。そんな有名人なの?
何も言わないでいると、シンドバッドさんは興奮したような顔で話し始めた。
幾重にも航海を重ね、世界中の七つの海 すべてを冒険した男。
世界数々の"迷宮(ダンジョン)"を攻略し、自らの国をうちたてた。攻略した"迷宮"はなんと七つ!!
「七人のジンの主、七海の覇王。それが"シンドバッド"だよ」
「ス…スゴイ…!!」
私も、とりあえず凄いことは何となく理解した。
…だけどこの人、自分のことこんなに熱弁して恥ずかしくないんだろうか。
私だったら絶対いたたまれない。
「けど僕にはよく分からないよ」
「えっ、分からないの!?"マギ"なのに?」
「うん。僕にはまだわからないことが多いんだ。
ジンの主とか、"迷宮攻略者"とかの話は最近聞いたばかりで」
迷宮やその他の知識は、私もアラジンと同じだ。もしくはそれ以下かもしれない。
シンドバッドさんは"迷宮"については今度教えると言ってくれた。
…というか、さっき"自らの国をうちたてた"って言ってたけど…
ということは何?もしかしてシンドバッドさんって物凄く偉い人なんじゃ…
「おじさん、僕一つだけ先に教えて欲しいんだ」
「何をだい?アラジン」
「"マギ"って何かな?僕はまず、自分自身のことをもっと知りたいんだ」
「ふーむ」
シンドバッドさんは少し考えて、"魔力(マゴイ)"のことを教えてくれた。
魔力とは"ルフ"が生み出す力のことで、万物に宿っているもの。普通の人は、自分の中の一定量の魔力しか使えない。
けれど"マギ"は別で、自分以外からも無限に"ルフ"の魔力を使うことができる。
『アラジンってすごいんだね…』
「…はい」
隣にいたモルちゃんに耳打ちすると、こくりと頷いた。
「"ルフ"たちに愛されている。
いやぁ…"マギ"ってのは本当に凄いね」
そう言われて、アラジンは照れて頭をかいた後、すぐ私を見た。
…ん?
「じゃあリホおねえさんもマギなのかい?」
「えっ!そうなのか?」
『いやいやいや!違います違います!』
ぶんぶんと首を振って否定した。
ポッと出の私がそんなすごいわけないじゃん!
「でも、リホおねえさんのルフは他の人とは違うんだ。とても綺麗な色をしているんだよ。おじさん達にも見せてあげたいなあ」
『あ、アラジン…!』
それ以上言ったら怪しまれるからやめて!
色なんてそんなの偶然だってば!
「…ルフの色か…」
ほらみろ!なんか凝視されてる!
「そうだ…そんな凄い君達に一つ頼みがあるんだが…」
「なんだい?」
「実は今、とある戦いを控えているのだが…俺にはとある事情で…
金属器が今、一つだけもないんだ!」
「七つ全部盗まれたんですけどね」
金属器って…話の流れ的に武器ってこと?
それ全部盗まれたって…
『もしかして、会った時 全裸だったのは…』
「ああ、どうやら彼処で寝ている間に盗まれたらしい」
マジで!?どんだけ管理能力ないんだよ!
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