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それから、モルちゃんとアラジンはウーゴくんのひとしきり遊んだ後、遊び疲れて寝てしまった。
二人を乗せたウーゴくんが跳ねる度、ベッドが壊れるんじゃないかとハラハラしたが、そんな心配は必要無かったらしい。



『これからどうしよう』



窓から外を見ながら、今後のことを考える。
とりあえずバルバッドに着くまではアラジン達といようと決めていたけど…
だけど、きっとモルちゃんは明日故郷に帰ってしまう。アラジンも、アリババくんに会えたら彼と一緒にバルバッドを出るだろう。
私がそれに着いていくわけには行かない。…さすがにこれ以上アラジンを頼るわけにはいかない。

と、なると…



『働かなきゃ』



元の世界に戻るまで、この国で過ごすことになる。そのためには生活費が必要だ。
これでもバイトの一つや二つはしたことがある。働くことに関しては何の問題もない。
仕事が見つかるまでの二三日はシンさんの言葉に甘えてこのホテルでお世話になろう。
明日、町に出て早速仕事探しだ。



『それにしても大きい月だなー』



窓から見える満月は、暗い闇にぽっかりと浮かんでいる。
街灯がないからか、星がよく見えた。
月明かりだけで十分生活していけそうだ。



「…リホおねえさん?」

『あ、ごめん。起こした?』



目をこすりながらアラジンが起き上がった。
しまった。独り言を言い過ぎたかな。



「…おじさんの部屋へは行かなくていいのかい?」

『ん?』

「おじさん、おねえさんが行ったら嬉しいと言っていたよ」



そうアラジンに言われて昼間の会話を思い出した。

…あー、あれね。



『あれは冗談で言っただけだよ。大体部屋の場所知らないし』



ベッドに腰掛けて まだぼんやり寝ぼけ眼のアラジンの頭を撫でる。
アラジンは気持ち良さそうに目を細めて再び横になった。



「じゃあリホおねえさん、今日はいっしょに寝てくれるかな?」

『うん、いいよ。ただし
変なところ触ったら殴るからね』

「…がまんするよ…」



アラジンは子供のくせに女の人が大好きだ。…いや、子供だからか。
油断すると胸や足を触ってくるし、今日もお風呂に入る時にナチュラルに一緒に入ろうとしてきた。
何というか…欲望に忠実すぎだ。

我慢宣言をしたアラジンの横で同じように寝転ぶ。
アラジンが私の服の裾を掴んだ。
…おおう…可愛いことするじゃないの!これが母性本能というやつか!



「僕、誰かとこうやって寝るのは初めてだよ」

『?…お母さんとは?』

「いないんだ。気付いたら広い部屋の中で、ウーゴくんと二人きりだったから」

『へえ』



あまり悲観的にならないように返事をした。
これ以上深追いをするのは多分、よくない。



「リホおねえさん、おねえさんは不思議だね」

『そう?…どちらかというと単純な方だけど…』

「不思議だよ。僕と同じでルフが見えるし、ルフが他の人と違うんだ。きれいな黄金の色をしてる」



ピチチチチ

アラジンの真っ白なルフが飛ぶ。



「ウーゴくんに触ったときも、おねえさんの周りにいっぱい いたよね」

『うん。あれは何だったんだろ』

「僕も分からないんだ。不思議な力のこといっぱい知りたい。そのために、僕は外に出たんだ」



まっすぐ私を見る蒼い目。
…そういえば、出会った時もこんな目をしていたっけ。



「リホおねえさんも、自分のこと早く思い出せるといいね」

『…うん。ありがとう、アラジン』



この時、



咄嗟についてしまった嘘を、私は少し 後悔した。





(ごめんね、アラジン)

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