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「『わ〜!ゴージャス!!』」



思わずアラジンと声をそろえてしまった。
ホテルのお姉さんに案内されて入った部屋はまさにゴージャスそのものだ。誰かそれ以外の形容詞で表せるなら表してほしい。
キングサイズのベッドが二つにキラキラとした食器が並ぶテーブル。
何ここ宮殿?この部屋だけで私の家の二倍はあるよ?



「何か分からないことがあれば、なんでも仰しゃってくださいね」

「それじゃあ おねえさん、一つ聞きたいことがあるんだけど…」

「はい、何でしょう?」


ベッドでゴロゴロしていたアラジンが、身体を起こしてホテルのお姉さんを見た。



「アリババくんて人を知らないかい?僕の友達なんだ」



ガシャン!!



アラジンが尋ねた途端、フルーツの乗ったトレイを落としてしまった。
驚いて、急いでお姉さんの方へ駆け寄る。



『大丈夫ですか!?』

「…?どうしたんだい?」

「失礼しました。その名前に少し驚いてしまいました。よく考えれば、そう珍しい名前ではありませんでしたね」

『聞いたことがある名前なんですか?』

「はい。あなたのご友人と同じ名前の者が、今 この国では有名人なもので…」

「有名人…?」

「今、"バルバッドのアリババ"といえば指すのはただ一人…」



フルーツを拾い終えて、テーブルに置く。
お姉さんがトレイを胸に抱いて、口を開いた。



「"怪傑アリババ"…この国一番の犯罪者でございます」





















『ふー!やっとお湯につかれたー!』



さすが高級ホテル。壁が大理石な上、ライオンの口からお湯が出ている。
砂漠を歩いてた間はオアシスで水浴びしか出来なかったからなー!
風呂場にはモルちゃんと私の貸し切りだ。私は浴槽で足をバシャバシャさせる。



『モルちゃん、そんな端にいかなくても』

「…こんな広いお風呂は初めてで…」

『あー、落ち着かないよね』



私は友達と大浴場とか行ったりするから慣れているけど、この世界にはそういう文化はないのかな。
モルちゃんに近付いて横に座った。



『モルちゃんはいつ船に乗るの?』

「明日、出航の時間を聞いてみます」

『そっか、楽しみだね』

「はい」



あまり感情を表に出さないモルちゃんは、ほんの少し笑った。
可愛いなあ。船に乗ってから大丈夫かなモルちゃん。お姉さん心配。



『モルちゃんと離れるのちょっと寂しいな』



まだ会って数日とはいえ、情が湧くには十分な日数だ。
故郷に帰ってしまったら、きっともう会えない。



「リホさんは、帰らないのですか?」

『え?』

「あ!すみません、覚えてないんですよね…」



モルちゃんは遠慮がちに俯いた。
私のことを気にしてくれてるんだ。
そういや、あの時 彼処にいた理由どころか自分の家さえ覚えてない設定だった…!
もうちょっと適当に言えば良かったよ。ものすごく遠い国から来たとか…



『うん…でも多分、かなり遠い所から来たんだと思う。生活様式が全然違うというか…』

「私、リホさんは身分が高い方だと思います」

『えっ!?何で!?』

「普通の民にしては上質な衣服だったので」



…確かに、バルバッドに来て色々な人を見て来たけど、女の人は布一枚のワンピースがほとんどだった。
モルちゃんもそうだったし…
中にはそんなのでいいの!?と疑いたくなる格好の人もいた。
私のいた世界の一般人とはかなり差がある。



「もし思い出したら、帰りたいと思いますか?」

『まあね。っていうか、帰らなきゃ』



だって、私はここに居るべき人間じゃない。
家族とか友達とかどうしてるかな。…心配、してるよなあ。
神隠し的な感じになってたりしたらどうしよう。捜索願いも出されてたりして…
戻ったら戻ったで「異世界にいました!」なんて言ったら絶対病院連れて行かれる。しかも檻付きの。



『…………』



…ううわ…戻りたくなくなって来た…



「リホさん?」



心配そうに顔を覗き込むモルちゃんに 何でもないよ、とだけ言って笑った。


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