title<!--←ここはお気に入り登録される時などの名前になります-->
2




それから私達は、丘を下ってバルバッドに入った。
町だと思っていたら王国だったから驚きだ。
海に面していて、色々な船が行き来している。屋台が所狭しと並んでいて、特に魚が多い。
どうやら漁業が盛んみたいだ。



『すごい…』

「ここは代々、サルーシャ一族という王族が治めて盛り立ててきた国なのだよ。
…しかし、先王が亡くなられてからは…国が乱れているようだね」



シンさんはチラリと壁の落書きを見ながら言った。
…何あれ、字?英語…じゃないよね。言葉は通じるけど、字は読めないのか…
知れば知るほど問題だらけじゃん。



「でも、ここなら安全だよ。俺がいつも泊まっている国一番の高級ホテル!」



そう言いながら、シンさんが指したのは見るからに高級そうな建物。
うっわ、造りが重厚そうだなー。



「でも、宿代が心配だわ…私は半年間 隊商(キャラバン)で稼いだお金があるけれど多くはない…」

「僕もだよ…。リホおねえさんは?」

『わ、私も…』



っていうか一銭も持ってません!!申し訳ない…!!
私アラジンとモルちゃんに何もしてあげられてないよね!?
大人の端くれとして本当情けない!!泣きたい!!



「なーに、心配いらないよ」

『え?』

「宿代は俺が出そう。助けてもらった礼だ。お金は、先にここに来ている俺の部下が払うから…
好きなだけここに泊まっていいよ」

「「!」」

『好きなだけ!?』



シンさんの発言に耳を疑った。
さっき国一番の高級ホテルだって言ってたよね?
それを好きなだけって…商人ってそんなに儲かるの?



「ありがとぅ〜 おじさんお金持ちなんだね〜」



…まあ、タダで寝床 確保出来たしいっか。



「じゃあ、俺は失礼するよ」

『はい、ありがとうございました』



まあ、その数秒後、
変質者に間違えられて追い出されそうになるんだけどね。
部下の人が来てくれたから良かったものの、そのまま連れて行かれたらどうするつもりだったんだろう…



















「…そうですか…私共の主人がご迷惑をおかけしました」



シンさんの部下の人はいかにも冷静そうな銀髪の人と、体力が自慢です!という感じの赤髪の人だった。
とりあえず今までの経緯を説明すると、銀髪さんは申し訳なさそうにしていた。
っていうか赤髪の人…モルちゃんとそっくりだ。



「主人の命通り、お三方の宿代はどうぞ私共にお任せくださいね」



優しく笑う銀髪さん。
やっぱり上が変だと下がしっかりするんだなあ。なんて失礼なことを思った。



『あの、本当にいいんですか?ここで一番高いホテルだって聞いたんですけど…』

「構わないさ。こちらも服を貸してもらったしね」



シンさんがアラジンの頭を撫でて言う。
や、それはそうだろうけど…



『…でもそれにしては出来すぎたお返しというか…』



まさに海老で鯛…どころかカジキマグロが釣れた状態だ。



「あはは!もしかして、後で何か見返りを求められると思ったかい?」

『え!?いやいや そんなことは…!』



ただ感謝を伝えたかっただけなのに、逆に失礼なことをしてしまっただろうか。



「…リホ、だったかな」

『はい』



名前は此処まで来る時に言っていたから、呼ばれても何の違和感もない。
返事をして見上げると、スっと顎に手を添えられた。



「まあ、今晩 君が俺の部屋に来てくれたら、それはそれで凄く嬉しいんだが」

「シン!」



何 で す と ?
しばらくそのまま固まっていると、シンさんは「冗談だ」と笑った。
や、やめてくれ そういう冗談は…!シンさんは顔がいいせいか心臓にくる!



「貴方って人は!…すみませんすみません!」

『イ、イエ…』



ペコペコと謝る銀髪さんを(ついでに私の心臓も)落ち着かせる。



『本当にありがとうございます』

「ありがとう!部下のおにいさん達!」

「さあ、あなたはそのはしたない格好をなんとかしてください」



銀髪さんはぐいぐいとシンさんをホテルの奥へ押す。
別れしな、ご飯を一緒に食べる約束をして三人は去って行った。



『さて、私達も部屋で一休みしようか!』

「うん!」


prev | next

2/5
>> Top