「これお土産です」

『わあ、ありがとうございま……何処に行ってたんですか?』

「オーストラリア4日間の旅」

『いつの間に!?』





とある女のあの世生活 伍





「ワシが貴殿に下す決断は……衆合地獄!」



閻魔殿。
今日も今日とて閻魔様は亡者を裁く。
私はその様子を端の方で見ていた。



「下着ドロ等低俗の極み!
よって"99年はき古された鬼のパンツまみれの刑"に処す!次の審査へ回せっ」

「ハイッ!」


地味な嫌がらせとしか思えない刑に判決された亡者は鬼に掴まれ、運ばれていった。
慈悲を…慈悲をォォォォ!と叫ぶ亡者だが、閻魔様が判決を変えることはない。

下着ドロってだと!?
何が慈悲だ!
お前なんか鬼のパンツまみれになってしまえばいい!しかも99年はき古された!
カーッペッ!という気持ちで去って行く亡者を見た。


「どいつもこいつ下着ドロだのなんだの…なげかわしい」

『まったくですな』

「つーか中身に興味持てよ」

『閻魔様、
それは色々アウトです』

「閻魔大王」



高い位置にいる閻魔様を冷めた目で見上げていると、鬼灯さんが視察から帰ってきた。
茄子と唐瓜も一緒だ。



『あ、茄子!唐瓜!』

「里穂だ〜!」

「おお 鬼灯君、君に貰ったオーストラリア土産ちゃんと飾ったよ」



閻魔様が指差す方を見ると柱にカラフルで不気味なお面が。
うっわ!これ私も貰ったヤツだ!
閻魔様も貰ったんだ…



「ああ、魔除けだそうです。綺麗でしょう」



怖ぇよ!
ていうか閻魔様 "魔"除ける必要あるのか?



「「掃除終わりましたっ」」

「お疲れ様」

「三途之川は特に問題ありません」

『三途之川に行ってたんですか』



三途之川といえば、生きている頃はあの世とこの世の境目のイメージだった。
まあ、私は鬼灯さんに殴られて地獄(ここ)に連れて来られたから全く関係無かったんだけど。
一度 鬼灯さんと行ったことがあるが、怖いお婆ちゃんがいたことしか記憶に無い。
確か奪衣婆とかいう名前だったかな。



「あ、でも奪衣婆が"賃金上げろ"ってキレてました」

「えー」

『亡者からも通行料とって給料値上げなんて贅沢すぎやしません?』

「あのオババ 我が儘なんだよなー」



閻魔様がため息混じりに言った。
それにウンウン、と頷く茄子と唐瓜。



「でも相手の男によって態度違ーよな」

「うん」

『あー、そういや鬼灯さんと話してる時 心なしか優しげだよね。
そのへんどうなんですか鬼灯さん』

「ところで、あの亡者は何をしたのです。随分わめいていますが」



スルー!
華麗にスルーかこのスパルタ上司!
そんでまだいたのか 下着ドロ!

鬼灯さんの質問に閻魔様は ああ、と返事。



「生前 女性の下着を盗み……あまつさえ それを誇らしくかざして捕まった変態だ」

『つまり女の敵。社会のゴミ。ホコリにも満たないカス野郎です』

「…里穂、あいつに恨みでもあるのかよ…」



唐瓜が若干引きながら私を見てくる。
いやそういう訳じゃないけどさ。被害者の気持ちを代弁したまでです。



「………まあ…その性癖はともかく窃盗ですね」

『モラルを疑います』

「…うん、ストレス社会の歪みかな…」










そんな会話をした矢先。
事件は起こったのだ。









『……無い!』


無い無い無い無い!
私のパンツが無い…!!

場所は大浴場。
心身ともにさっぱりした後、さて服を着よう、と変えの下着を探すも見当たらない。
え?私ちゃんと持ってきたよね?
途中で落とした?いやそんなまさか。
時間もかなり遅く、大浴場には私しか居ない。だから人が間違えて持って帰ったってことは無いはず。
ていうか各々籠が用意されてるから、よっぽどのことが無い限り間違えたりしない。

ということは、つまり。



『盗まれたァァアアアア!!!!』



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