「最近彼氏とはどうなの?」

「うーん、そろそろ潮時かも」

「ええ?まだ付き合って間もないじゃない」

「だってぇ〜」

「そうだ、里穂ちゃんはどうなの?」

『へ?』





とある女のあの世生活 肆





とある甘味処。
ここは最近 開店した人気店であり、昼休みに利用する獄卒は多い。
特に女子は此処の甘味に夢中だ。
そして、私もその一人だったりする。
お香さんと何人かの獄卒とで女子会状態にも関わらず、私は恋バナなんて完全にBGM化していた。



『このあんみつ最高!』

「そうじゃなくてー」



獄卒の一人、お菊ちゃんが項垂れる。



「まあ、里穂ちゃんは近くに地獄人気No.1の彼がいるからいいわよね〜」

『は?閻魔様?』

「何でそっち?
鬼灯様よ 鬼灯様!」

「お菊ちゃん、それ閻魔大王に失礼よォ?」



お香さんも思わず苦笑。
ごめん閻魔様。思わぬところで傷付けてしまった。



『鬼灯さんってそんな人気なんだ…』

「当たり前!第一補佐官って鬼神の中でもトップなのよ!?エリート中のエリートなんだから!」

「仕事できるし!」

「超美形だし!」



鬼女達が息を荒くして語り始めた。
まあ確かに鬼灯さんは顔はいいけど…性格がなあ。



「美形といえば、白澤様も素敵だわ」

「ああ!確か和漢親善競技大会の時、漢側の審判してた…」

「彼も鬼灯様とは違う魅力よねぇ」



白澤様?…また新しい人が出てきたぞ。
首を傾げると、お香さんが再び苦笑い。



「桃源郷にいるから、里穂ちゃんは会わないわね。…確かに彼は美青年だし優しいけれど、ちょっとねェ…」

「あ、そういや お香さんは会ったことあるのよね?」

「どんな方なの?」



お香さんは暫らく考えて、こほん、と咳払い。



「衆合地獄でよく見かけるわ」

「あー」

「そっち系かぁ…」

『衆合地獄って?』

「邪淫罪の亡者が堕ちる所よ」

『じゃいん…』

「だからぁ、」



それでも分からないでいると、お菊ちゃんがそっと耳打ちしてくれた。

…な、なんと!
そんな所があるのか!昔で言う遊郭みたいな?
つーかそこでよく見かけるって結構問題なんじゃ…



「泣かされた女は数知れずらしいわ。気を付けるのよォ?」



ま、私にゃ関係無い話だな。



「やっぱり結局は鬼灯様なのよねぇ」

「硬派が一番よ」

『えぇ〜!?』

「あら、里穂ちゃんは白澤様派?意外とロクデナシに恋するタイプ?」



ロクデナシて。さっきまでイケメンだ何だ言ってたくせに…
女の切り替えの早さはレースカー並みだ。



『そういうわけじゃないけど、優しいのが一番だなって最近思うようになって…』

「その心は?」

『上司がスパルタすぎる』



ロクデナシでも女好きでもスケコマシでも優しいならいいじゃん!
やっぱり優しさって大切だよ!優しさ万歳!



「鬼灯様の下で働けるだけ幸せと思いなよ〜」

『確かに働かせてもらえるのは有難いけどさあ…あの人本当鬼なんだって!』

「そりゃ鬼だからね」

『や、人種的なことじゃなくてね。マジで!いくら私が死んでるからって容赦無さ過ぎる!』

「……そうなんだ」

「……そ、それは大変ねェ」

『もうアレ病気っすよ病気!拷問中毒!』

「…………へぇ」

『大体 飴と鞭の対比 絶対おかしい!完璧に
飴0.01:鞭99.9だよ!』

「……里穂ちゃん、そろそろ、」

『この間なんてご飯の食べ方まで注意してきてさあ!お前は私のオカンかっつー「ほ〜う」



…………ん?



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