二 『此処が…』 目の前に広がる光景は、何とも…例え難い。 とりあえず亡者の頭やら腕やらを噛んでいる。犬が。 犬も可愛いのやら厳ついのやら…セントバーナードとかいるんですけど。 ブランド犬じゃん!すげえな! 「あら、鬼灯様!」 …喋った!!!犬が喋った! 一番近くにいたトイプードル小走りで駆け寄ってきた。 「こんにちは、クッキーさん」 『クッキー!?超洋名じゃないっすか!』 「そちらは?」 『あ、今日から鬼灯さんの部下になった里穂です』 「なんだ、亡者だと思って噛み付きそうになったわ」 ヒィィイイイ!!勘弁してくれ! 「寿退社する際に必要な書類を持ってきました。サインをお願いします」 『寿退社!?そんな制度あるんですか此処!』 意外とちゃんとしてるんだ!普通の会社と変わらないじゃん! 『おめでとうございます』 「ウフフ、ありがとう。あ、ちょっと待ってくださいね。シロたち呼んできます」 「はい、すみません」 『シロ…?』 「鬼灯様〜!」 クッキーさんと入れ替わりにやってきたのは真っ白な犬と猿と雉。 犬、猿、雉…あれ、このフレーズどこかで… 「彼らは桃太郎の元腹心です」 『そうだ桃太郎……桃太郎!?え!?桃太郎の犬猿雉!?本物!?』 「わあ、新鮮な反応」 「元だけどな!」 いやいや!元ってことは桃太郎実在したの!? それにまず驚き…っていうか英雄がこんなところで何してんだ! 「俺シロ!よろしく!」 『里穂です。よろしくね』 握手代わりのお手。 可愛い!すごい可愛いんだけどコレ!モフモフしたい! 「俺がルリオでこの猿が柿助」 『よろしく〜』 うわ〜何このプチ動物園。 此処いいな〜。此処で働きたいかも。 『それで、肝心な桃太郎は何処に?』 「桃太郎は桃源郷で働いてるよ」 『桃源郷?…桃だけに?』 「まあ、その内行くことになるでしょう。………チッ」 舌打ち?!今舌打ちしたこの人! 一体 桃源郷に何が!? 鬼灯さんはシロちゃんをひと撫でして、金棒を担いだ。 「さて、仕事も終わりましたし帰りましょうか」 * 『今日はありがとうございました』 自室の前で礼を言う。 無理矢理だったけど。まあ知り合いも出来たし結果オーライ。 「視察のついでだったので気にしないでください。お礼は龍の目玉でいいですよ」 『めだ…っ!? そんな入手度S級の物をタカらないでください!』 「冗談です」 冗談…か?本当に冗談か!? 無表情だから分かりにくいんだよなー。 …でもみんなに慕われてるし、こうして部屋まで送ってくれたし、案外いい人… 「それでは里穂さん、また明日」 『はい、また………ん?』 「どうかしました?」 そのまま帰るのかと思いきや、隣の部屋のドアに手をかけた鬼灯さん。 よくよく見てみるとドアの上には鬼灯のマークが。 『…………』 ああ、なるほど。 隣かよ (おちおち鼻歌も唄えない) 2/2 戻・進 |