『此処が…』



目の前に広がる光景は、何とも…例え難い。
とりあえず亡者の頭やら腕やらを噛んでいる。犬が。
犬も可愛いのやら厳ついのやら…セントバーナードとかいるんですけど。
ブランド犬じゃん!すげえな!



「あら、鬼灯様!」



…喋った!!!犬が喋った!
一番近くにいたトイプードル小走りで駆け寄ってきた。



「こんにちは、クッキーさん」

『クッキー!?超洋名じゃないっすか!』

「そちらは?」

『あ、今日から鬼灯さんの部下になった里穂です』

「なんだ、亡者だと思って噛み付きそうになったわ」



ヒィィイイイ!!勘弁してくれ!



「寿退社する際に必要な書類を持ってきました。サインをお願いします」

『寿退社!?そんな制度あるんですか此処!』



意外とちゃんとしてるんだ!普通の会社と変わらないじゃん!



『おめでとうございます』

「ウフフ、ありがとう。あ、ちょっと待ってくださいね。シロたち呼んできます」

「はい、すみません」

『シロ…?』

「鬼灯様〜!」



クッキーさんと入れ替わりにやってきたのは真っ白な犬と猿と雉。
犬、猿、雉…あれ、このフレーズどこかで…



「彼らは桃太郎の元腹心です」

『そうだ桃太郎……桃太郎!?え!?桃太郎の犬猿雉!?本物!?』

「わあ、新鮮な反応」

「元だけどな!」



いやいや!元ってことは桃太郎実在したの!?
それにまず驚き…っていうか英雄がこんなところで何してんだ!



「俺シロ!よろしく!」

『里穂です。よろしくね』



握手代わりのお手。
可愛い!すごい可愛いんだけどコレ!モフモフしたい!



「俺がルリオでこの猿が柿助」

『よろしく〜』



うわ〜何このプチ動物園。
此処いいな〜。此処で働きたいかも。



『それで、肝心な桃太郎は何処に?』

「桃太郎は桃源郷で働いてるよ」

『桃源郷?…桃だけに?』

「まあ、その内行くことになるでしょう。………チッ」



舌打ち?!今舌打ちしたこの人!
一体 桃源郷に何が!?

鬼灯さんはシロちゃんをひと撫でして、金棒を担いだ。



「さて、仕事も終わりましたし帰りましょうか」



















『今日はありがとうございました』



自室の前で礼を言う。

無理矢理だったけど。まあ知り合いも出来たし結果オーライ。



「視察のついでだったので気にしないでください。お礼は龍の目玉でいいですよ」

『めだ…っ!?
そんな入手度S級の物をタカらないでください!』

「冗談です」



冗談…か?本当に冗談か!?
無表情だから分かりにくいんだよなー。
…でもみんなに慕われてるし、こうして部屋まで送ってくれたし、案外いい人…



「それでは里穂さん、また明日」

『はい、また………ん?』

「どうかしました?」



そのまま帰るのかと思いきや、隣の部屋のドアに手をかけた鬼灯さん。
よくよく見てみるとドアの上には鬼灯のマークが。



『…………』



ああ、なるほど。




隣かよ
(おちおち鼻歌も唄えない)


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・進