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黄瀬涼太。
バスケの強豪校 帝光中レギュラー。中学二年生から始めたとは思えないプレーセンスで、現在はIH常連校 海常高校の期待のエース。
そしてその甘いルックスから人気モデルという顔も併せ持つ彼。

そんな彼に、今日は色々プライベートなことについて聞きたいと思います!



田中(以下 田):というわけで、今人気絶頂の黄瀬くんですが…

黄瀬(以下 黄):はは、やめてくださいよ。全然そんなことないっス。

田:またまた〜!でも今のところ、やっぱりモデルの仕事よりバスケが重視なんですか?

黄:今のところっつーか、多分学生のうちはずっとバスケっスね。やっぱバスケの方が楽しいんスよ。

田:あらら、それは残念。でも私も前の試合見せてもらいました!
さすが女性ファンが多かったですね〜。

黄:いやあ…(苦笑)
先輩に女の子が苦手な人がいて、よく怒られるんスよね。もちろんオレとしては応援はすごい嬉しいっス!

田:サインを求めるファンにも丁寧な対応でしたね。
やっぱり、ファンの中に可愛い子がいたら気になったりするんですか?

黄:え!?そうっスねえ、オレにはみんな可愛く見えるんで分かんねぇっス!

田:でも好きなタイプはあるでしょ?できれば具体的に教えて欲しい!

黄:うーん、オレをちゃんと見てくれる人っスかね。

田:と、いうと?

黄:オレの中で今はやっぱりバスケが一番なんで、それを理解してくれて心から応援してくれる子がいいっス。

田:そんな子いっぱいいますよ!?
でもとりあえず、今は女の子よりバスケなんですね。

黄:はい(笑)恋愛は二の次っスね!

田:これを読んでる女の子はみんながっかりするでしょうね(笑)
…では次の質問です。休日の過ごし方は───…





『ぬわぁあああ!!』



あと少しのところで破りそうになったのを抑え、雑誌を机に叩きつけた。
クラスメイトの視線が全て私に注がれる。



「珍しいもの読んでると思ったらいきなり奇声上げて…どうしちゃったわけ?」



リコがやれやれ というように雑誌を拾い上げた。他のクラスメイトも私を見る。
日向くんも騒ぎを聞きつけて、リコの横から雑誌を覗いた。



「ファッション雑誌ぃ?」

「…あ、黄瀬涼太」



ペラペラとページを捲って、私がさっきまで見ていたところに辿り着いたリコ。
その名前に、読んでいた記事を思い出した。
何が「恋愛は二の次っスね!」よ!!この大嘘つきが!人の彼氏に手を出してるくせに…!



『……日向くん』

「な、何だよ…」

『私に足りないものって何かな』

「「は?」」



リコと日向くんが声を揃える。
訳が分からない…そう言いたそうに私を見る。



「何?黒子くんと何かあったの?」

『あったというか無いというか…とりあえず、私しか見えないようにしたいのよ』

「心配しなくても、黒子のやつはお前のことしか見えてねぇだろ」

「というか、黒子くんが他の子に見えてないからね」



そうじゃなくてさー!黄瀬がどういう手段を使ってきても大丈夫なようにしたいんだってば!
…なんて言えるはずがない。言ったところで馬鹿にされるに決まってる。



『……ちょっと行って来る』

「どこにだよ。もう昼休み終わるぞ」

『黒子くんのクラス!』

「あ、ちょっと里穂!」



私は二人にそう告げて、教室を出た。



「情緒不安定を通り越して挙動不審なんだけど」

「今に始まった話じゃないけどな」

「……そうね」




















『というわけで火神くん、黒子くんを夢中にさせるにはどうすればいいと思う?』

「知るか」


大量の焼きそばパンを頬張る火神くん。嫌そうな顔をしながら私を見た。
いくらなんでも先輩にその顔はないでしょ!
火神くんが後ろの席を覗くと、黒子くんはスヤスヤと眠っていた。
く、黒子くんの寝顔…!!!可愛すぎる!
って、今はそんな場合じゃない。



『私 真剣なのよ。私に足りないものって何?』

「つーか、先輩 黒子の彼女なんだろ?ならそんなこと別に気にすることじゃないんじゃねーの?」

『そうなんだけど…』



火神くんから当たり前のように出た言葉。
それが ずしり、と重みを帯びたように感じる。

…私は自分に自信がないのだ。黒子くんは饒舌な方ではない。だから具体的に私のどこがいいのかとか、そういうことを聞いたことがない。
…それでなくても、普段から私が黒子くんにべったりって感じなのに。
今更 不安になるなんて、遅過ぎるのかもしれないけれど。



『んー、じゃあ分かった。火神くんが私と付き合うとしたら、私ってどこが駄目?』



質問を変えた。この方が答えやすいだろう。
火神くんが私をじっと見て、考えた。私も火神くんを見つめる。
火神くんの視線が一瞬下りる。それにつられて、私もそっちを見た。

ま、まさか…



『火神くん私 真剣だっつったよね!?殴るよ!』

「そっちが聞いてきたんじゃねーか!」

『悪かったな色気が無くて!リコに言い付けてやる!』

「それだけはやめろ!…てください!!」



確実に胸見たよコイツ!思春期にも程があるだろ!
大体 黒子くんがそんな…

………ん?



『待てよ?黒子くんも健全な男子なら少しくらいそういうことに興味あるよね?』

「…まあ、無いとは限らねぇな。全く想像できねぇけど」



それに"女特有の色気"は黄瀬がどう頑張ってもアピールできない。言わば私だけの必殺技。
使わない手はないよね。むしろバンバン使っていくべきかも知れない。
…まあ、私の色気があるかどうかは別にして。



『でかした火神くん!』

「あ?」

『ありがとう!やるだけやってみる!』



ちらり と再び眠る黒子くんを見た。
黄瀬なんかに、この天使の寝顔を取られてたまるもんか。

…待っててね、黒子くん。





(どうか私だけ見ていて)


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