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積み重ねが大切なんだよ。



私と彼と非日常 11





テスト。
それは学生において逃げようのない試練であり、宿命である。
いつもはチャランポランな私も、前日になるとそれなりに焦るわけで。
むしろ、前日にならなきゃ焦らないわけで。
…そして今日がその前日なわけで。



「いや〜!さっすが神崎さん!恩にきます!」



場所はファミレス。目の前には喋り倒す紀田少年。

こんな状況になったのは数分前。
学校帰りに夕飯の買い物をしていると携帯にメールが届いた。
''里穂さん助けて!''
そんな文面と共に送られてきたファミレスの写メ。
何事!?もしかして不良に絡まれたとか!?
心優しい私は急いでファミレスへ走った。そりゃもう必死で。
が、そこで待っていたのはウェイトレスをいつもの調子でナンパしている紀田少年(16)。

いくら菩薩のような心を持った私でもドラゴンスクリューの一つや二つかましたくなります。
しかしそれにも関わらずピンピンしてる紀田少年に少し恐怖を覚えた。



『紀田少年、私を呼んだ理由を簡潔かつ端的に述べよ』

「勉強教えてください!」

『却下!』

「即答!?ちょっと待って!ウェイト!」



速攻で帰ろうとした私の腕を掴む紀田少年。

ひ、必死だ…



「マジでお願いしますよ〜!このままじゃ俺進級も危ういんすよ!」

『日頃の自分が悪い!』



そしてそれはお互い様です!
私なんか進級じゃなくて卒業だから。冗談じゃないよほんとに。



「今日は俺の奢りでいいっすから!」

『それを早く言いたまえ 少年』



まぁそんなに言うなら仕方ないかな?
少年にそんな必死に頼まれちゃ優しい私には断れません。
別に奢ってもらえるからとかじゃないですよ?あくまで紀田少年のためだから。

そそくさと席に座る私を見る紀田少年の笑顔は引きつってたけど気にしねーぞ そんなん。



「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」

『あ、私はこの黒毛和牛ステーキセットをライス大盛りで』

「今の無しでドリンクバー二つ」

「か、かしこまりました…」

『…ケチ』

「里穂さんに言われたくないっす」



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