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ご主人様、私もう疲れました…
私と彼と非日常 6
『お帰りなさいませ ご主人様!お荷物お預かりいたします』
マニュアル通りの台詞を言い、私は今日も働く。
普段なら死んでも着ないフリフリのエプロンドレスに身を包み、活字にすれば語尾にハートマークの付くような喋り方。 日常のあたしを知る人間がもし今の状態を見たなら100パーこう言うだろう。
突然変異でも起きたのか?と。
「リホっちー!」
『あ、狩沢さんとゆまっちさん』
名前を呼ばれ、声のした方に振り向く。 テーブルに向かい合わせに座っているのは常連さんである狩沢さんとゆまっちさん。 メイドの指名も出来るこの店で、いつも私を贔屓してくれるお二人さんだ。 何でも“真面目な現役女子高生”と“萌え萌えなメイドさん”のギャップがいいらしい。 …私は決して真面目ではないけど。この間もテストが欠点ギリギリだったし。
「もー!''お姉様''って呼んでって言ってるのにー」
『あ、すいません…お姉様』
狩沢さん(以下お姉様)曰く、ご主人様よりもテンションが上がるらしい。
「そういえば、何でリホっちは源氏名じゃないんすか?」
ゆまっちさんが読んでいた本から目を離し、私の胸にある名札を見て言った。
源氏名というのは、この店専用のあだ名のようなものだ。 先輩達は可愛い名前に変えてたりするけど、私は名前をカタカナにしただけだった。
『初めは使ってたんですけど、いまいち慣れなくて…呼ばれても気付かないっていうか…』
名前を呼ばれてるのになかなか反応しなくて店長によく怒られたもんだ。 今は狩沢さん達が''リホっち''って呼んでるから、他のお客さん達もそう呼んでくれてたりする。
『それにしても、すごい本の量…』
テーブルいっぱいに広がった本。紙袋の中にもたくさん入ってる。
『これってライトノベルってやつですよね?同じのが何冊も…』
「私のとゆまっちのとー、あとは色々用も買ったからね」
『色々用?…あ、観賞用 保存用 実用用…みたいな?』
「まぁそんなとこっす」
何だそのニンマリした笑みは…!
気になるけど、これ以上聞いたら新世界の扉を開くことになりそうだったからやめておいた。
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