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ドジとかいう次元越えてますよね…



私と彼と非日常 2





シズさんと同居して数日。

冷蔵庫の中に牛乳しか入ってなかったり、
シズさんが血まみれで帰ってきたり、
新羅さんからセルティさんとの半分嫌がらせのような惚気を聞かされたり、

そんな非日常が日常へと変わり始めていた。

が!事故は起こったのだ。



『うぉわっ』

「おい…っ!」



間抜けにも、自分の足につまずいた私を助けようと腕を掴んだシズさん。
もちろん、前に倒れそうになる私を後ろに引っ張ることは当たり前のことで、



ゴキィッ!



『い゛…っ!?』



所謂、咄嗟というやつだったんだと思う。
でもその“咄嗟”はシズさんに力を制御する余裕なんて与えてくれなかったのだ。

あり得ない方向に曲がった左腕。
ぷらーんとしてしまっている状態はそれはそれはキモかった。自分の腕だけど、究極にキモかった。

しかし本当にキモくなったのはシズさんの方だった。
なんと、その事故から何故か私の半径1メートル以内に近付かなくなった。

というか、



『避けられている!』

《そんなにあからさまなのか?》



夕方、バイト帰りに新羅さん宅に左腕の包帯を取り替えてもらいに行くと、新羅さんではなくセルティさんがいた。
どうやら新羅さんはお仕事で出掛けているらしい。

あの人でも出掛けたりするんだ!完全に引きこもりだと思ってた。



『あからさまにも程がありますよ!今日の朝なんか目も合わせやしねーんですよ!』

《…やっぱり、里穂に怪我させたことを気にしているんじゃ?》

『えー、でもその事は謝ってくれたし…第一怪我したのはシズさんのせいじゃないじゃないですか…』



私の腕がこうなったのは自分の足につまずくっていう大ボケをかましたせいだ。
シズさんは助けようとしてくれたんだから、責任を感じる必要なんてない。



《でもそれしか考えられない。静雄は優しいから》

『優しすぎますよ。シズさんは何を目指してるの?バファ○ン?』

《他の人を傷付けるのが怖いんだ。だから人との間に変な予防線を張ってしまう》

『予防線…』

《ああ。でも人とは関わっていたい…矛盾してるけど、気持ちはわからないこともないよ》



PDAを素早く打って私に見せるセルティさん。
彼女には顔はないけど、なんとなく苦笑している気がした。



《里穂なら大丈夫だ。きっとその予防線を飛び越えられる》

『…だといいけど…』

《いける!私が断言する!……けど、》

『…?』

《大切だと思うからこその行動だってこと、忘れないでやってほしいんだ》



大切だと思うからこそ――…



セルティさんのその言葉は、私の頭の中に深く刻まれた気がした。


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