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『…あ、そうだ!杏里ちゃん携帯もってる?番号交換しようよ!』

「さすが里穂さん!そのナンパのテクを是非教えていただきたい!」

「正臣、里穂さんは女子だからナンパにはならないよ」



携帯を取り出すと後ろから紀田少年達の声がした。
オイオイ、何帰る準備してんだ。勉強はどうした勉強は。



「二人とも、もう勉強はいいんですか?」

「だーいじょうぶ。もう遅いし、女の子は帰った方がいいって」

『呼び出したのは紀田少年だけどね』

「やだなぁ!それは言いっこ無しっすよ〜!」

「里穂さん これ」



帝人くんが差し出してくれたのはスーパーの買い物袋。
それを見た瞬間、はたと買い物帰りだったことを思い出した。



『あぁぁああ!やば!アイス…!………溶けてる…しまった、すっかり忘れてた…』



帰ったら食べようと思ってたのに…



「ありゃりゃ。ご愁傷さまっす」

『誰のせいだ誰の!
これを食べながら金曜ロードショーを見る私の予定どうしてくれるんだ馬鹿者ォォォ!』

「う、うわ!里穂さん落ち着いて…!」









♂♀









『ただいまでーす』

「遅かったな」



あの後、帝人くんと杏里ちゃんの宥めにより紀田少年は一命をとりとめました。

くそ、やっぱり一発くらいアッパー食らわしとくんだったかな。
でも杏里ちゃんの番号ゲットできたし、まぁいっか。
アイスは許さないけど。



『シズさん早かったんですね』

「今日は人数少なかったからな」



他愛もない会話をしながら買った物を冷蔵庫に直しながら無惨な姿になったアイスを捨てていると、
シズさんがキッチンへ寄ってきた。



『?…どうかしました?』

「いや、早く帰ってきた日くらい何か手伝うことねーかと『皆無』

「てめっ、人がせっかく…!」

『だっ、だってシズさん食器割りかねないじゃん!』



杏里ちゃんとあんな話をしてたからか、シズさんの優しさが倍に感じられる。



「里穂さんはその人のこと、愛してるんですね」



不意に杏里ちゃんの言葉が頭に過った。
…………いやいやいや、何過っちゃってんの?
勝手に過ってんじゃねーよ 心臓に悪い!



「……おい何やってんだ?」

『何って、食材を冷蔵庫に…』

「そこ電子レンジだぞ」

『え、』



いつの間にかパンパンになってた電子レンジ。

ネギとか飛び出てるし!



『うぇえ!?間違えた!』



慌てて中を取り出す。
そんな私を見ながらシズさんは「変なモンでも食ったか?」と真剣に心配していた。









♂♀









数日後、



来良のテストが無事終わったらしく
''里穂さんのおかげで欠点免れました!これはお礼っす!遠慮しないて受け取ってください!''というメールと共に
紀田正臣ブロマイド(自撮りと思われる)が30枚ほど送られてきました。
信じらんねー!


''恩を仇で返す''とはまさにこの事だ、と身をもって学んだ私であった。



(送り返してやろうかな…)


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