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「…私 まだ恋愛とか、よく分からなくて」



俯いて話す杏里ちゃんは恥ずかしいのか、それとも答えに困っているのか。
どちらにせよ、この話題はあまりよろしくないらしい。



「でも、竜ヶ峰くん達はすごく大切な友達だと思ってます。私はずっと、今のままいられたらって…」



……女の勘ってやつかな。
なんとなくだけど、杏里ちゃんは帝人くんの気持ちに気付いてる気がした。
気付いてて、知らないフリをしているんだ。…何故かは分からないけど。



『そっか、大丈夫だよ。二人共何だかんだで優しいし』

「…優しいから、甘えてしまうんです」



あ、なんかそれ…分かる気がする。
私は脳内に金髪バーテン服の彼を思い浮かべた。

…成る程、優しすぎるのも問題だ。



「私は彼らを利用しているのかもしれません」

『利用って…それまた大袈裟な』



苦笑する私に杏里ちゃんはゆっくり首を横にふった。



「中学の頃もそうだったんです。こんな自分、嫌だって思うんですけど…」



誰かに依存する生き方を選んだのは私ですから。



杏里ちゃんの話は難しすぎて、ぶっちゃけ何を言ってるかイマイチ分からなかった。
だけど杏里ちゃんはそれに対しての私の答えを聞きたいというわけではなさそうだ。



『…私さ、両親いないから今は親戚の人と暮らしてるんだけど、』

「…!す、すみません!なんかこんな暗い話…」

『あー、いいのいいの!…それでさ、その人がすごい優しくて…正直、甘えっぱなしなんだよね』



ほんとに、嫌なくらい。
たまに理不尽な怒りをぶつけられることはあるけど。
まぁそれはお互い様か。



『その人のために何か出来ることはないかって考えるけど、そんなの思い付かないし』

「………」

『もう考えるのも面倒くさくなっちゃって』



つーか私がシズさんに出来ることなんて無いだろ。あの人は自分で何でもするからな。
…あ、料理は私の方が上手いか。シズさん一人暮らしの時は外食ばっかだったみたいだし。



『今が良けりゃそれでいいやって思ってさ!』



笑うと杏里ちゃんもくすり、と笑った。
可愛いなぁ もう!と感激しながら飲みかけのジュースを口を含んだ。



「…里穂さんは…」

『ん?』

「その人のこと、愛してるんですね」

『ブフゥォッ!』



予想外だった杏里ちゃんの言葉にジュースを噴いてしまった。

あ、愛…っ!?



「すっすすすすみませんっ!何言ってるんだろう私…」

『いやこっちこそごめん!ジュースかかってない?』



おしぼりでテーブルを拭きながら聞くと大丈夫です、という返事。

いやマジすんません。
ダメだ。絶対引かれた。ジュース噴く女子高生とかあり得ないもん。

でも里穂めげないぞ!


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