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『あ〜、肩凝るー』



紀田少年と教科書を広げて一時間はたっただろうか。
何回目かのジュースを入れにドリンクバーの場所で並ぶ。

何にしよっかなー。オレンジュースはもう飲んだし…
我ながらくだらない事に頭をフル回転させながら無意識に後ろを見た。



『「……あ」』



そこには紀田少年が熱弁していた園原杏里ちゃんがいた。
杏里ちゃんも私の存在に気付いたらしく、同時に声を上げる。



『杏里ちゃん、だよね?紀田少年に聞いたよ』

「はい、あの…私も紀田くんに聞いて…里穂さん」



俯きかげんに話す杏里ちゃん。

人見知りなのかな。
眼鏡で巨乳で人見知りってどんだけキャラ出来上がってんの!?
私なんかまだ定まってない感丸出しなのに…!



『紀田少年のことだからろくでもないこと言ってんだろうなー』

「そんなこと、とにかく変わってて面白い人だって聞いてます」

『やっぱりろくでもないことだった!』



あの野郎 席に帰ったらボッコボコ×3決定!
''可憐でおしとやかな百合のような人だ''とでも言っとけばいいのにさー!

気のきかない奴だよねー、という話をしながらコップにジュースを淹れて杏里ちゃんと一緒に席に戻る。



『あれ!?帝人くんと一緒に座ってる』



さっきまで私が座っていた席にはすでに帝人くんがいた。

うーん、ザ☆放課後の男子高校生!って感じだな。
紀田少年もナンパナンパ言ってるけどやっぱり男の子同士の方が楽しそうだ。
まぁ女の子の話してる時も目が輝いてるのには変わりないけど。



『仕方無い。邪魔するのもアレだし…こっちも一緒に喋ってよっか』



はい、と微笑んだ杏里ちゃん殺人的に可愛かったです ハイ。









♂♀









「今日はすみませんでした」

『え?』



席に座るなり謝る杏里ちゃんに?マークが飛び交う。



「紀田くんも一緒に教えるって言ったんですけど…''俺には強い味方のお姉様いるから心配ない''って聞かなくて…」

『あぁ、大丈夫大丈夫。私も明日テストなんだけどもういいや』

「え、大丈夫なんですか…?」

『うん。なんかもう今更頑張っても焼石に水みたいな?』

「…………」



その同情するような目をすぐさま閉じてください…!
私はもういいんだ!卒業出来れば!
大学行く気ないし!金もねーし!



『あ、杏里ちゃんはいつも紀田少年達とつるんでるの?』



これ以上勉強の話を避けるために無理矢理 話題を引っ張り出す。
結構急カーブになってしまった気もしなくはない。
着いてきてくれ杏里ちゃん!カモン!



「はい。二人共すごく仲良くしてくれて…竜ヶ峰くんとは一緒に委員長もやってるんです」



お!やるじゃん帝人くん!



『へぇ、帝人くん優しそうだもんねー』



ここは帝人くんの株を上げてやりますか。
恋のキューピッドなんて初めてだけど…成せばなる!



『杏里ちゃんって好きなタイプとかないの?』

「えっ」



杏里ちゃんはほんのり頬を染めて驚く。

かーわーいーいー!
ウブだなぁ。私にはこのウブさが足りないのかもしれない。
……あ、胸もか。



「タイプなんてそんな…」

『やっぱり優しい人がいいよね!帝人くんみたいな!』

「……竜ヶ峰くん…?」



さっきの顔とは打って変わってキョトンとした杏里ちゃんの顔。

しまった!焦りすぎた!
これじゃ帝人くんが杏里ちゃんのこと好きですって言ってるようなもんじゃん!
ごめん帝人くん!


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