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『で?何が分からないの?』
「数学がちょっと…」
数学か…数Tならなんとか… 紀田少年が取り出した教科書を覗く。
『数学なんて公式を覚えればいいんだって。公式を征するものは数学を征する』
「ス○ダン?」
『大体私の他に教えてくれる子いるでしょ。友達いないの?』
「里穂さんよりは居ますよ」
く…っ!言い返せないのが悲しい!
「一人 通知票がオール10でエロくて可愛い友達がいるんすけど…」
『エロは関係なくね?』
あっち、と紀田少年が指差す方を見ると、来良の制服を着た男女が二人。
あれは…
『帝人くん?』
と、見知らぬ女の子。 その女の子を見るなり、私の全思考が停止した。
『…………』
「おーい、里穂さーん?」
巨乳メガネっ娘だと!? ちょ、何それ!?そんなの聞いてませんよー!
『もしかして紀田少年の言ってたエロ可愛い女子ってあの子?』
「ピンポンピンポンピンポーン!さっすが里穂さんお目が高い!」
お目が高いの意味が全然違う気がする。まぁ紀田少年のことはどうでもいい。 帝人くんと話している彼女は、地味な風貌ではあるけど十分美少女の類いだ。 そして何よりあのスタイル。本当に胸が大きい。 思わず自分と比べてしまう。 う、羨まし……いや、私だってまだ成長…する、か?
「園原杏里っていうんすよ」
『杏里ちゃんか…名前も可愛らしい』
「ちっちっち!名前だけじゃないんだな〜!」
『へぇ、どんな感じの子?』
「うーん、そうですねー… 里穂さんとは真逆な感じです!」
『…そう』
「あ!違うっすよ!?別に里穂さんがエロ可愛くないって言ってるんじゃ…里穂さんは里穂さんで魅力的なんすけどー」
こんなにも人の口を縫い付けたいと思ったのは生まれて初めてです。 フォローになってねぇんだよ!追い討ちかけてどうするよ!
「でもあれっすよ!俺の知り合いが貧乳はステータスだって『乳の話はもういい!』
誰が貧乳だァァァ! つーか!最近の高校生はみんなこんななのか!?みんな中二の夏から抜け出せてないのか!? …ったく、ちょっとは帝人くんを見習……ん?
『紀田少年、帝人くん顔赤くない?』
「ああ、そりゃあもう、帝人は杏里にフォーリンラブっすから」
『え、マジで!?』
なるほど…それで紀田少年は気を効かして私に… ハッハーン、なかなかやりますな旦那。
『ただのナンパ野郎じゃなかったんだね。紀田少年』
「惚れ直したっていいんすよ?」
キラーンと決めポーズをする紀田少年。 私はそれを軽くスルーして教科書に目をうつした。
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