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「…情けねぇな」
『す…すいません…』
「手前じゃねーよ。俺がだ」
『?』
「守ってやれなくて悪かった」
頭を撫でるシズさんの手はあまりに大きくて、 何だか久しぶりに泣きそうになってしまった。
『だ、だからシズさんは悪くないって…』
「おう」
『私が気を付けて無かったから…』
「わかってる。…ありがとな」
全然わかってない。 シズさんは優しすぎる。だから甘えてしまうんだ。 油断したら、その大きな手に全てを預けてしまいそうになる。
「僕も一人だったんだ。君みたいに」
『一人、じゃないですよね』
「あ?どうした 急に」
『いや、なんとなく』
「ストーカーに何か言われたか?」
図星。
上手く否定出来なくて、私は黙っていた。
「…安心しろ。俺はお前の味方でいてやる。一人になんかさせねぇ」
『……嘘、ついててもですか』
「お前馬鹿か?嘘ついてても信じるのが味方ってもんだろうが」
ああ、この人はどうしていつも私の一番欲しい言葉をくれるんだろう。
「だからお前も…」
『…?』
「勝手にどっか行ったりすんなよ」
『はい!』
そばにいて、なんてことは口が割けても言えないけれど。 それがお互い様であることを、きっと私は願ってる。
─────…
「これ、片付けちゃっていいかしら」
波江はテーブルに散らばった新聞紙をひとまとめにしながら言った。 散らばした張本人は携帯を手に、にやりと口角を上げる。
「ああ、悪いけどそれファイルに入れといてくれる?」
自分でしろ。 そう言ってやりたいが雇われている身なので波江はその言葉を飲み込んだ。
「随分前の新聞じゃない。三年前?」
「ちょっと面白い記事が載っててね」
「あなたの言う“面白い記事”なんて相当悪趣味なんでしょうね」
「どうかな、感受性は人それぞれだ。でも十分役にはたったよ」
携帯の着信音が鳴った。 届いたのはとある少女からのメール。 臨也は礼の言葉が書かれたそれを読み上げる。
「無知というのは素晴らしいね」
君達は今のうちにその安い絆を深めておけばいい。 深ければ深い程、それが切れた時 粉々に砕け散る。もう修正など不可能なほどに。
「楽しみだなぁ。君もそう思うだろ?」
未だ眠る“首”を見て臨也は再び口角を上げた。
(あ!冷蔵庫のプリン期限切れですよ!)(もう食った)
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