1



「里穂ちゃーん、そろそろ上がっていいわよー」

『はーい!』



ドタチンさん達に送ってもらったのは昨日の話。
今日も今日とて、朝に例の奇怪文が届いた。
しかし、ストーカーやら何やらにキャーキャー言っている暇はなく、私は今日も働いている。

渡草さんは別にいいって言ってくれたけど、やっぱり修理代は払おう。
ボンネットの修理代っていくらかかるんだろ…調べなきゃなー。



『……あ!』



ロッカールームに行き、携帯を見るとメール一件。そして着信も一件。
メールの方を先見てみると、シズさんからだった。





From:平和島 静雄
Title:無し
――――――――――
迎えに行く。
バイト終わったら連絡しろ。





……どうやら一応心配はしてくれてるみたいだ。
それにしても素っ気ないメールだなぁ。
絵文字とは言わないまでも、顔文字くらい使ってほしい。
''連絡しろ(*^^*)''的な…
いやキモいな…やっぱりそのままでいいかもしれない。



『着信はっと……ゲッ!』



着信履歴を見てみると''折原臨也''の文字。

心底見なかったことにしたかった。
が、相手が臨也さんなのでそういうわけにはいかない。(後で何されるか分かったもんじゃない)
シズさんへの連絡はこっちの用事が済んでからだな。

そう思い、着信履歴からそのまま通話ボタンを押す。



プルルルー、プルルルー、プルルルー…



『出ねぇし』



無機質な呼び出し音が聞こえてくるだけで、出る気配が全くない。

あんにゃろー、そっちからかけてきたくせになんだよ…!
こっちは親切で折り返しかけてやってんのによォ。
なんか私が臨也さんと超喋りたいみたいじゃん!
今のあたしの状況にタイトルをつけるなら''着信アリ〜すれ違う想い〜''だ。
実際そんないいもんじゃ無いけど。つーかホラー映画でこんなんあったな。



「あ!神崎ちゃんまだ居た!」

『どうしたんですか?』



通話終了ボタンを凹むんじゃないかと思うほど強く押した瞬間、先輩がドアから顔を覗かせる。
服はもう着替えていて、綺麗な花柄のワンピースだった。



「実はちょっと急用が出来ちゃって…。悪いけど、ゴミ出し当番変わってもらえるかしら」

『あ、いいですよ』



ありがとう。そう言って先輩は駆け足で去っていった。

ハッハーン、あれはこれからデートだな。
羨ましい。私もあんな花柄ワンピース着る頃が来るのかねぇ。



『とりあえずゴミ出し行くか』



シズさんに連絡するのは着替えてからにしよう。
私は持っていた携帯をエプロンのポケットへ入れ、裏口へ向かった。









♂♀









『よっこら、どっせーい!』



我ながら女子高生とは思えない掛け声と共にごみ袋を三つ、放り投げる。

こういうのは一気にやっちゃわないとね。
時間とお金を無駄にしないのが私のモットーです。



『任務完了っと』



ゴミを出す場所は裏口から出てすぐのところにあった。
だから路地裏と言えど警戒なんてしなかったし、ゴミを置いたらすぐに戻ろうと思っていた。



『…?』




背後に人の気配がして、振り向こうとした瞬間、



ドゴッ



『――…っ!?』



突然頭部を襲う鈍い痛み。

……うわ、やば…、…

意識が遠くなる中、私は咄嗟に携帯のリダイアルボタンを押していた。


[ 1/7 ]

[*prev] [next#]



[しおりを挟む]