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「里穂ちゃーん、そろそろ上がっていいわよー」
『はーい!』
ドタチンさん達に送ってもらったのは昨日の話。 今日も今日とて、朝に例の奇怪文が届いた。 しかし、ストーカーやら何やらにキャーキャー言っている暇はなく、私は今日も働いている。
渡草さんは別にいいって言ってくれたけど、やっぱり修理代は払おう。 ボンネットの修理代っていくらかかるんだろ…調べなきゃなー。
『……あ!』
ロッカールームに行き、携帯を見るとメール一件。そして着信も一件。 メールの方を先見てみると、シズさんからだった。
From:平和島 静雄 Title:無し ―――――――――― 迎えに行く。 バイト終わったら連絡しろ。
……どうやら一応心配はしてくれてるみたいだ。 それにしても素っ気ないメールだなぁ。 絵文字とは言わないまでも、顔文字くらい使ってほしい。 ''連絡しろ(*^^*)''的な… いやキモいな…やっぱりそのままでいいかもしれない。
『着信はっと……ゲッ!』
着信履歴を見てみると''折原臨也''の文字。
心底見なかったことにしたかった。 が、相手が臨也さんなのでそういうわけにはいかない。(後で何されるか分かったもんじゃない) シズさんへの連絡はこっちの用事が済んでからだな。
そう思い、着信履歴からそのまま通話ボタンを押す。
プルルルー、プルルルー、プルルルー…
『出ねぇし』
無機質な呼び出し音が聞こえてくるだけで、出る気配が全くない。
あんにゃろー、そっちからかけてきたくせになんだよ…! こっちは親切で折り返しかけてやってんのによォ。 なんか私が臨也さんと超喋りたいみたいじゃん! 今のあたしの状況にタイトルをつけるなら''着信アリ〜すれ違う想い〜''だ。 実際そんないいもんじゃ無いけど。つーかホラー映画でこんなんあったな。
「あ!神崎ちゃんまだ居た!」
『どうしたんですか?』
通話終了ボタンを凹むんじゃないかと思うほど強く押した瞬間、先輩がドアから顔を覗かせる。 服はもう着替えていて、綺麗な花柄のワンピースだった。
「実はちょっと急用が出来ちゃって…。悪いけど、ゴミ出し当番変わってもらえるかしら」
『あ、いいですよ』
ありがとう。そう言って先輩は駆け足で去っていった。
ハッハーン、あれはこれからデートだな。 羨ましい。私もあんな花柄ワンピース着る頃が来るのかねぇ。
『とりあえずゴミ出し行くか』
シズさんに連絡するのは着替えてからにしよう。 私は持っていた携帯をエプロンのポケットへ入れ、裏口へ向かった。
♂♀
『よっこら、どっせーい!』
我ながら女子高生とは思えない掛け声と共にごみ袋を三つ、放り投げる。
こういうのは一気にやっちゃわないとね。 時間とお金を無駄にしないのが私のモットーです。
『任務完了っと』
ゴミを出す場所は裏口から出てすぐのところにあった。 だから路地裏と言えど警戒なんてしなかったし、ゴミを置いたらすぐに戻ろうと思っていた。
『…?』
背後に人の気配がして、振り向こうとした瞬間、
ドゴッ
『――…っ!?』
突然頭部を襲う鈍い痛み。
……うわ、やば…、…
意識が遠くなる中、私は咄嗟に携帯のリダイアルボタンを押していた。
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