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『はぁー…』

「あらリホちゃん、ため息ついちゃ幸せが逃げるわよー」

『…先輩』



バイト中、厨房で皿洗いをしていると、接客を終えた先輩が通りかかった。



『幸せなんて元からありませんよ』



今日は朝からシズさんの機嫌がかなり悪かった。
多分、昨日の晩ずっと見張ってて寝てないせいだ。
そんな都合良く現れるわけないって言ったのに…ましてや相手はシズさん。
あんなのが待ち構えてても出てくるならむしろ尊敬に値する。
いや、ストーカーは許せないけどね。



「もしかして、この前言ってたストーカー?そんなに酷いの?」

『まぁ…なんか脅迫状みたいなのが届いて…』

「えぇ!?リホちゃん何かしたの?」

『あ、いや 脅されてるのは私じゃないんですよ』

「あら、じゃあ彼氏?大変ね」

『本当は違うんですけど、勘違いされちゃってるみたいです』



別れろも何も付き合ってないもんな。
まぁ家族でもないのに一緒に住んでるんだから、勘違いされててもしょうがないか。



「でもまぁ、案外あっさりやめるかもよ?ストーカーさん」

『え?』

「ほら、この店に来るお客さんってメイドにあらぬ幻想を抱いてる人多いじゃない?
だから実際私達の日常を見ると幻滅するっていうか…」

『なるほど』

「私の時がそうだったのよねー。煙草吸ってるところ見られちゃって」

『マジすか。つーか、え!?煙草!?』



先輩のキャラが分からなくなってきた!
…でもそっか。よくよく考えて見れば、普段のあたしを見て好いてくれる男なんているはずがない。
いるとしたらきっと視界に何らかのフィルターがかかってるに決まってる。
………あれ、なんか悲しくなってきた。何でだ。



「あ、そういえばいつもの二人が店に来てたわよ。顔見せに行ってきたら?」

『はーい』


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