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ストーカー 駄目、絶対。



私と彼と非日常 10






『後をつけられてる気がする』

「あ?」



晩御飯中。
飲んでいた味噌汁のお椀を置いて、真剣な顔をして言う。
シズさんはそんな私をわけが分からない、というように見た。



「何だよ 急に」

『最近なんか無駄に視線を感じるっていうか、追いかけられてるっていうか…』



異変に気付いたのは数日前。
特にバイト帰り、人気の無い道を歩いている時に後ろから自分以外の足音がする。
ただの足音なら私も気になんてしない。しかし、私が走れば走る。止まれば止まるのだ。
……まぁつまり、何が言いたいかと申しますと、



「ストーカーだぁ?」

『そう!』

「……気のせいだろ」



ハイ!言うと思ったそれ!
興味なさそうにすんなァ!せめて箸を止めろ!



『私も初めは気のせいだと思ったんですけど、実際うちの店では結構あることみたいで…』

「店?…ああ、あのメイドカフェな」

『先輩も一度あったって言ってて…どう思います?』

「どう思いますってお前…自意識過剰なんじゃねぇか?」

『ひどっ!言っときますけどあたし結構人気な方なんですよ!私 目当ての常連さんもいるんですから!』

「あのナリでか」

『あのナリでです』



世の中には色んな人がいるんですよ シズさん。
現役女子高生ってだけで食いついてくる客も少なくない。
まったく、ありがたい話ですな。



「だったら簡単な話だろ。やめちまえ、そんな店」

『この単細胞!そんな簡単な話じゃねーんだよ!
頼むから真面目に考えてください!』

「うるせぇ!気のせいだっつってんだろうが!手前にストーカーなんかつくわけねーだろ!」

『な…!』

「いいから早く飯食え。次その話したらデコピンだからな」

『…………』



もっと文句言ってやりたかったけどデコピンはさすがに嫌なので、私は黙って箸をすすめた。









が、










次の日の朝、事件は起こった。



「何だコレ」

『…手紙?』



ポストに折り畳まれて入っていた紙切れ。
シズさんが発見したそれを広げてみると、



『…今、す…ぐ…別れ、ろ…じゃ、ない…と、殺ス…?』



''今すぐ別れろ。じゃないと殺す''
そう書かれた奇怪文。
何これ…!サスペンスでよく見るやつだ!



「おい、これは何だ」

『奇怪文?』

「知ってる。…昨日言ってたストーカーとかいう奴か」

『おそらく』

「じゃあ何だ?この殺すっつーのは俺に言ってんのか?」

『……多分。でもこれを警察に持っていけば何か、』



ビリィッ



『ギャァア!何やってんですか!大切な証拠を!』

「殺すだぁ?だったら姿見せろってんだ!こんな遠回しなことしやがって!」

『ほーら言ったでしょ!やっぱストーカーいるんですって!私 間違ってなかった!』

「偉そうにすんじゃねェェエ!!」



その晩、シズさんは夜中ずっとドアの前に立って見張っていたが、ストーカーは現れなかった。


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