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―――――…





『…………う、…』



目が覚めると、また固いコンクリートの上だった。
どうやらまだ元の時代には戻ってないみたいだ。
私はその事実を受け入れたくなくて、もう一度寝てやろうと目を瞑ろうとした。



《あの…大丈夫ですか?》

『あぁはい、大丈夫で……!?』



見慣れすぎた活字に普通に返事をしかけたが、驚いて飛び起きる。
すると、目の前には黄色のヘルメットと、黒いライダースーツのその人。



『セルティさん!』



セルティさんだ!マジもんのセルティさんだ!
ってことは何!?私 帰って来たの!?



《な、何故私の名前を!?》

『…え、』



前言撤回。
やっぱりまだ時代は変わってない。



『何ていうか…その、すっすいませんっしたァァァ!!!』



私はセルティさんの問いに何て答えて良いか分からず、全力疾走でその場から逃げた。









「おかえりセルティ!…どうかしたの?」

《不思議な子に会ったんだ》

「へぇ。そんなことより聞いてよ!今日またシズオくんがさー…」

《…………》









♂♀









『焦ったー』



まさかこの時代にセルティさんがいたとは。
にしても全然変わらないなセルティさん。顔は分からないけど、スタイルとかあのままだったし。
妖精は歳とらないのかな?

そんなことを考えながら行く宛もなく歩く。
空はもう暗くなりかけていて、晩御飯の時間なのか、近くの家からは料理の匂いが漏れていた。
この家はカレー。あ、あの家は魚焼いてるな。
と一人晩御飯言い当てゲームをしていると、向こうの方から子供が一人走って来るのが見えた。

あれは、



『幽くん?』

「…昨日の…」



ん?昨日?
もしかしてさっきより一日だけ日付が変わってるのかもしれない。
どうせならあと十年くらい進めてくれ。そしたら戻るから。

幽くんは相変わらず無表情だが、何か焦っているようだった。



『そんな慌てて…どうしたの?』

「帰って来ない」

『帰って来ないって…静雄少年?』



幽くんは頷いて汗を拭う。



「近くはさがした」

『昨日の公園は?』

「公園は、まだ…」

『そっか…よし!公園は私が行くから、幽くんは家に帰りなよ。もう遅いし』

「…でも、」

『大丈夫、約束するよ。絶対見付けて帰るから!…はい、これあげる!』



不安気に見詰める幽くんに飴玉を一つ渡す。
こんなもんで勇気づけられるとは思っちゃいないけど、ないよりマシだ。



「…どうも」



半年前くらいの飴だけどね。
近所のオバチャンに貰ってポケットに入れっぱなしだったなんて口が裂けても言えません。


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