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『私の怪我がなら気にしないでくださいって言ってるじゃないですか。シズさんのせいじゃない』
「どう考えても俺のせいだろうが」
『ただの骨折ですよ 骨折』
「………」
『ああもう!』
なんだその顔! 私が言いたいのは、そんな怪我のことではなく。
『セルティさんが言ってました。シズさんは人を傷付けるのが怖いって』
「…あいつが?」
『はい』
余計なことを…とシズさんは不機嫌に呟く。 けれどその呟きはつまり、図星だということを表していて、 この人は本当に優しい人だと思い知った。
『シズさんが近くにいるくらいで私は傷付きません』
「現に今怪我してんじゃねーか」
『これは私が自分の足につまずいただけだっつってんじゃん!シズさんは助けてくれたでしょ!』
「怪我してちゃ一緒だ」
こいつは…!! 何が何でも予防線を飛び越えさせないつもりか! ナメなよ!私のジャンプ力はマリオ並みさ!
私は立ち上がり、頑固なシズさんの隣に座った。
『私は、そんなくだらない理由で避けられるのは嫌です!』
「手前…くだらない理由って何だ。俺は真剣に、」
『なら真剣に馬鹿です』
「あぁ゛?」
『そんな風に避けられる方が何倍も傷付くっつーんですよ!』
「な、」
『傷付くって…わたしゃ割れ物か!?割れ物注意かこの野郎』
自分でもヒロインらしからぬ発言だと思う。 けどそんなこと、この際どうでもいい。
『私はそんなか弱くありません』
「………」
『シズさんに避けられるくらいなら骨の一本や二本…どうってことないですよ』
ほんと言うと、痛いのは嫌だけど。 もうこの気まずい雰囲気に耐えられそうにない。
『それに、せっかく二人で食べてるのに会話がないんじゃ、一人で食べてるみたいで…』
不思議だ。シズさんと暮らす前はそれが当たり前だったのに、今ではどうして平気だったんだろうと思ってしまう。 あの時は全く寂しいなんて思わなかったなぁ。一人でいることに慣れてしまっていたかもしれない。
「…――かった」
『え?』
「悪かったって言ってんだ」
え、え?何ですと?
照れているのか、私と目を合わせようとしない彼。 耳が心なしか赤いのは勘違いじゃないはず。
『シズさん…照れてる?』
「なっ、照れてねぇ!」
『いやいや照れてますよ。耳赤「照 れ て ね ぇ!」
『いひゃい いひゃい!ふいまふぇん!』
両頬を伸ばされて言葉じゃない言葉を発する。 痛いけど、なんだか嬉しいのは秘密。 あ…この言い方だと私ドMみたいだな。
「…ありがとな」
消えそうな呟きに、不意に思い出したセルティさんの言葉。
《大切だと思うからこそ――…》
うん、なんかやっぱりシズさんて…
『バファ○ン以上に優しいかも』
「は?」
『何でもないでーす』
私はそう言いながら、もう冷めた味噌汁を口に含んだのだった。
―――その数分後、
テレビのチャンネルの取り合いで本気の殴り合いになりかけたのは誰にも言えない秘密です。
(さっきから言おうと思ってたんだけどよ)(?)(口のところ米粒付いてる)(は、早く言えやァァァ!)
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