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『トムさん、とシズさん…』

「おい里穂、何やってんだ」

『あ、えーっと…』

「へ、平和島…!?」



ヒロシはシズさんを見て顔を青ざめた。
アケミちゃん達もこの上なくビビっている。

過去に何かあったのか?



「あ?何だ 手前ら」

「ヒィッ!!」

「あ!ちょっと待てよ!ヒロシ…!!」



シズさんが一睨みすると、逃げ出すヒロシ。そしてアケミちゃん達もその後を追った。

逃げ足はやっ!ショ○カー?



「知り合いか?」

「さあ?」



トムさんの問いかけに首を傾げるシズさん。
彼に投げられた人間は星の数ほどいるからね。そりゃいちいち顔なんて覚えてらんないよね。



「手前、バイト終わったら真っ直ぐ帰れっつってんだろ」

『帰り道ですよ!』

「ってかこのクマ何だ?」

『あ、忘れてた』



トムさんのセリフでぽつーんと立っているクマの存在を思い出す。

いや本当に申し訳ない。



『実はどぅぉぉおしてもシズさんに会いたい人がいまして…』



どうしても、というところをかなり強調して言ってみた。



「で、何でクマ?」

「俺は金太郎じゃねえぞ」

『それには深ーいわけが…。ね』



羽島さんに問いかけると、こくり、と頷くクマ。



「誰だ お前?」

『そういう乱暴な言い方やめて!失礼!』

「うるせーな。俺の勝手だろうが」



ハッハーン、そんなこと言っていいですか。
羽島幽平だぞ?シズさんが一話一話欠かさず録画してるドラマの主演だぞ?
顔見た瞬間 絶対今の言葉後悔するね。



「………久しぶり」



こもった声で呟くように言った。
羽島さんのそれはシズさんにはっきり届いたようだった。



「…その声、幽か…?」



私が問いかけた時みたいに、羽島さんはゆっくり頷いた。


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