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「あはは何このクマ!超ウケるんだけど〜!」

「『…………』」



……ヤバい。
ヤバいのに捕まってしまった。
途中までは良かったんだよ。夜に池袋を歩くクマと女子高生なんてみんな見て見ぬフリだ。
しかし、例外がいた。
今私達の前にいるのは来良の制服を来たギャルが三人。
しかも三人共 背中に羽が生えていた。正しくは着けている、だけど。



「つーか何でクマがこんな時間に歩いてるワケ?」

「可愛くね?写メ撮ってよ写メ!」

『いやいや!私達急いでるから!写メは次の機会に…』

「はァ?ちょっとくらいいいじゃん」



良くねーから言ってんだよ!
アンタら分かってねーから言うけどそのクマの中身 羽島幽平だぞ!

ギャル達に携帯を押し付けられて、ため息を付いた。
羽島さん(クマ)はそんな私を見てコクリと頷いた。
無理矢理 回避するよりさっさと撮って終わらせようと思ったらしい。
さすがだなぁと思う反面、内心土下座をした。



『すいません 羽島さん…』



小声で謝りながらストラップがじゃらじゃら付いた携帯のカメラを向ける。
すると羽島さんは隣に立ってたオレンジ頭のギャルの肩を抱いた。

サービスか!さすが俳優!今はクマだけども!



「…えっ」

『撮りますよー……?』



カメラを向けているのに、オレンジ頭のギャルは顔を赤らめて羽島さんを見つめていた。
着ぐるみを着てもイケメンオーラは隠しきれないのか…
やるな!羽島幽平…!
って感心してる場合じゃない。



『はい、チー「アケミ!!」



ズ、と言おうとした瞬間。
いかにも族っぽい男がこちらに向かってきた。



『…?』

「ヒロシ!?何でここに…」



オレンジ頭のギャル(以下アケミちゃん)は驚いたように男(以下ヒロシ)を見た。
おいおいおい、何が始まるんだ?



「お前、何なんだよ!昨日の態度!」

「別れるっつってんのにヒロシがしつこいからじゃん!」

「何だと!?」



別れ話かよ!
そんなものに付き合う義理はない。今のうちに逃げよう。

私はアケミちゃんの携帯を隣にいた彼女の友達に預け、羽島さんに近付いた。
が、羽島さんの腕はガッシリとアケミちゃんに掴まれていた。

アケミィィィィ!!空気読んで頼むから!



「俺は別れるなんて認めねぇからな!」

「マジありえないんだけど!それに私好きな人いるし!」

「あぁ!?誰だよ!」

「こいつ!」



アケミちゃんは羽島さんを引っ張るとヒロシの前に出した。

ちょ、



『待て待て!こんな痴話喧嘩に巻き込まないでくださいよ!』

「てめぇは黙ってなクソアマ!」



く、クソアマァ!?
何だとこの短足野郎!着ぐるみ着てても羽島さんの方がスタイルいいぞ!



「何だこのクマ ふざけんじゃねぇぞ!」

「………」

「何とか言ったらどうだ あぁん!?」



ヒロシは羽島さんの胸ぐらを掴んで睨む。
といっても羽島さんの方が身長が高いので見上げるかたちになってるけど。



「ちょっとやめてよ!」

『いやほんとやめて!』



その中身 羽島幽平ィィィ!!
顔に傷でもついたらどうすんだヒロシ!責任とれるのかヒロシ!



「…………」

「なめやがって…!」



ヒロシは羽島さんに向かって拳を振り上げた。
…っ…もうバレるとかそんなん言ってらんない!



『だから!そのクマは羽島ゆ「里穂ちゃんじゃねーの」



え?

正体をばらそうとしたその時、私を呼ぶ声。その声でヒロシの拳はギリギリのところで静止した。
振り向くと、見慣れたドレッドヘアーと金髪。



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