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『トモちゃーん、お昼食べよー』

「はいはい。って全部ツナマヨ!?何個食べる気だよ…」



昼休み。教室で各々ランチを広げる。
私は勿論 朝に調達したサンドウィッチだ。私が命からがらに手に入れた…



『…そういえば聞いてよトモちゃん。朝に変な二人組に会っちゃってさー』

「安心しなよ、あんたも十分変だから」

『トモちゃん?』

「それで?どんな奴?」



相変わらず息をするように暴言を吐くトモちゃん。
そんな貴女が私は好きよ…



『なんか緑の下睫毛眼鏡と金髪のイケメン』



カラン…
トモちゃんが持っていた箸を落とした。顔色もみるみる内に青ざめていく。
おお…インディゴブルー…



「…ねぇ、その人達 かなり長身じゃなかった?」

『そうそう!絡んできたから一発決めてやったわ!アハハハハ!』

「…信じられない」



頭を抱えるトモちゃん。
え、私何かまずった?



「そっか…花子、順応性高すぎて麻痺してたけど一ヶ月前に転校してきたばっかだもんね…知らなくても当たり前か…」



そう。私は親の仕事の都合でこの学校に転校したてのホヤホヤのホヤッティ。
家から一番近いって理由だけでこの帝光を選んだ。



「あんたが一発決めたのはバスケ部の緑間くんと黄瀬くんだよ」

『あー、ここのバスケ部って超強いんだっけ?パンフに載ってたような…』

「しかもスタメンは超イケメン揃い。ファンクラブもあるくらい」



ウゲー、マジか。有名人だったの?
まあ確かにあいつらがいたら目立つよ。
私 朝来たら移動教室と放課後以外、あんまり教室出ないからなー。



「特に主将の赤司くんは''赤司様''って呼ばれてるくらいなんだからね。滅多なことすると過激派のファンに返り討ちだよ」

『ふーん。どうせ眼鏡取ったの○太みたいな顔してんじゃないの?』

「そんなわけないじゃん」

『へぇ〜。ま、関係ないけど』
















放課後。
日直最後の仕事である日誌を書き終えた。後はこれを職員室に返すだけだ。
教室も私以外誰もいない。
鍵をかけて出よう、と椅子から立ち上がった。



「あの」



!?
誰もいないはずなのに、すぐ近くで男の子の声がした。
きょろきょろと辺りを見渡す。



『…気のせい?』

「気のせいじゃありません。こっちです」

『うわっ!』



後ろを振り返ると、綺麗な水色の少年が一人。
え、いつの間に!?というか誰!?



「すいません。ボクも日直だったのにあまり仕事が出来ませんでした」

『へ?日直…?』



黒板の端にある名前を確認する。
そこには私の名前の隣に''黒子''と書かれていた。
…あれ、じゃあこの人が黒子くん?
私はてっきり一人だけ日直っていうのは可哀想だからっていう先生の粋な計らいだと思ってた。
手伝える奴は誰でも黒子になってやれ的な。
まさかマジもんの黒子くんがいたとは。



『ご、ごめんね。''ほくろ''くん…』

「''くろこ''です」

『あ、読み方はあってたのね…ややこしいな…』



こんな子クラスにいたっけ?
さ、最悪だ私…一ヶ月もいるのにクラスメイトの名前も知らないなんて…



「ところで茶野さん」



あー!しかも相手方は私の名前覚えてらっしゃる!
ごめん!本当ごめん!でも全然印象に残ってない!悲しいくらい残ってない!
私は罪悪感を感じながら返事をした。



「バスケに興味ありませんか?」

『…は?』



唐突な質問に罪悪感が吹っ飛んだ。
バスケ…ってバスケットボール?スポーツの?



『体育の授業でしたことはあるけど』

「…すいません。こんなこと聞くのは失礼だと思うのですが…」



と言いつつ無表情な黒子。



『いいよいいよ。何でも聞いて!』

「では…他人から面倒だと思われたことはありますか?」

『失礼だな 君は』

「…何でも聞いて良いと言いました」



言ったけども。
…うん、何となく彼という人間がわかってきた。



『さあ?言われたことはないね』

「清潔ですか?」

『マジ何なの…?』



お年頃の女子にそんなこと聞きますか?
お前ら男子よりは清潔な自信あるわよ。



『一応シャンプーの香りは意識してます』



私も何真面目に答えてるんだ。
じっ、と私を見つめる黒子。正直怖い。
こういう可愛い顔してる奴が実はとんでもなかったりするんですよ。



「少しボクについて来てくれませんか?」

『嫌です』

「……お願いします」



ええ!?頭下げる程!?
ちょ、ちょ、ちょっと!一体何が彼にここまでさせてるの!?



「もう貴女しかいないんです。ボク達が頼れるのは」

『…………』




ああ トモちゃん

私、とんでもないことに巻き込まれそうです。








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