晴矢と付き合って一週間、付き合う前と変わらず一緒に暮らしてるしセックスだってしてるのに何かが違う。
「…恋人っぽくない」
そう、なんというか、恋人とかそういった可愛らしい関係ではないのだ。
俺の言葉を聞いた晴矢はよく分からない、とでも言うように首を傾げた。
「じゃあなんだよ」
「うーん…夫婦?」
「あんまり変わらないだろ」
「結構重大な差だと思うんだけど」
「そうか?どんなことすりゃ恋人っぽくなるんだよ」
そう聞かれてしまうと言葉が詰まってしまう。恋人らしいことなんて晴矢が初めての恋人なのだから分からない。
俺は必死に思考を巡らす。すると一つの考えが浮かんだ。
「キス…とか」
そう言えば、告白される前からセックスはしていたけど、キスは一度もしたことがない気がする。よくよく考えればそっちが先のはずだよね、そんな事を考えていると晴矢に顎に手をかけられ、顔を近づけられる。
「えっ、な、晴矢!?」
「するんじゃないのか?」
「う、うんするけど」
まぁ、こんな事で今さら恥ずかしがるわけないけど、一応目を瞑る。
ゆっくりと晴矢の気配が近づいてくるのを感じた。おかしい、鼓動が早くなる。全身の血液が顔に集中するように顔が熱い。
ふにりと唇が触れ合う、舌は入れず、触れるだけのキス。キス位で赤くなるほど自分はウブじゃなかったはずだ。
「ヒロト、」
名前を呼ばれると、ふわふわと足がつかないような感覚に陥る。
恥ずかしくなって俺は晴矢に抱きついた。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、しばらくこのままでいてくれなきゃ怒る」
俺がそう言えば少し呆れたようにため息をついて抱きしめ返してくれた。