人間の心拍数はだいたい23億回までと決まっているらしい、例えばストレスが溜まっている人間が早死にするのはそれが心拍数をあげてしまうのが原因らしい。
理不尽ではないだろうか、そんなささいな事で寿命が決まってしまうなんて、
「何考えてんだよ、ヒロト」
そんな事を考えていると晴矢が俺の名を呼んだ。あぁ、きっと今もどんどん寿命が削られていく。ムカついたから抱きついてやった。
自分の鼓動がまた早くなった。
だけれども例えばの話をしよう。もし俺が抱きついたところでまなんにも晴矢が感じていなかったら、ドキドキしているのが俺だけだったら。
俺だけが早死にして、晴矢が他の子と楽しく恋愛して俺のことなんて忘れてしまったら、
そんな事を考えると寂しくて、俺は一層腕に力を込めた。ぐえっとわざとらしい声が聞こえたけれど気にしない。俺だけが死ぬなんて許せないよ。
「晴矢、」
「なんだよ」
「早く死んじゃえ」
「ばーか、アンタを置いてったら、アンタ寂しがって泣くだろうが。」
思いも寄らない晴矢の答えに俺はびっくりして思わず目をパチクリとまばたきさせた。
どこまで俺をドキドキさせる気なんだろう。
俺が死んだらきっと死因は心臓の鳴りすぎで、犯人は晴矢だろう。
そう考えたらなんだかそれでもいいや、と思えてきて、むしろ嬉しくなった。
俺には他殺願望なんてこれっぽっちもないのに、どうしてくれるんだろうか。
「晴矢の人殺し」
俺がクスクスと笑ってそう言えば晴矢はなんだそりゃ、と肩をすくめた。