“お前の事嫁にするから”

いきなりそんな意味の分からない宣言をされて早1ヶ月。あの馬鹿変態、というか卑猥神は私の家に住み着いてしまっている。かといって今の所何をされたという訳でもなく(まあ卑猥神の名に恥じぬ程度のセクハラは多々あるものの)一応平和な日々が続いている。

「くぉら起きろ居候!タダ飯食わせてやってんでしょ!」
「…何も食べてないじゃん俺」

長めでサラサラの黒髪、切れ長の紅い瞳…所謂美形、イケメンという類の顔の卑猥神。神は食事の必要はないとかで確かに何も食べていないのだがそこはあれだ、言葉のあやという奴だ。

「寝床提供してやってんだからね?さっさと起きなさいよ」

私は無理やり布団を剥ぎ取ると未だ愚図るそいつを蹴飛ばした。

「うっわ…俺一応神なのに罰当たりー…つーか女の子が蹴りとか」
「うるっさいなぁ、あんたみたいなのが神とか世も末だわ」

そう吐き捨ててやれば彼は端正な顔を歪めて私を見やる。彼の人とは違う(人間ではないのだから当然といえば当然なのだが)紅い瞳に私が映り込む。

「君にはその女神になって貰うんだけどねー…もう1ヶ月だし、頃合かな」

そう言って髪をかき上げる。…いただけない。何がいただけないって、何度も言うようだがこいつは美形なのだ。身体のパーツ一つ取っても非の打ちどころがない。神だから当然なのかもしれないけど、そんな相手に見つめられてしまうと、その、ドキドキ…し、しないけどね!?

「こっち来い」

彼のいつもより低い、強い言葉と共に視界反転。立って上から座っている彼を見ていたのに目の前にはその彼の整った顔。更にその奥には、天井。天井?というか、口調が、声が、いつもと違ったような、

「この俺が1ヶ月も我慢したんだぜ?」
「え、ちょ、誰あんた、」
「お前の旦那になる男卑猥神だよ」

彼の細く長い指が私の髪に絡まる。というか誰だお前、こんなイケメンで攻めオーラたっぷりな卑猥神私の知り合いにはいない。

「何。驚いてんのか?そんな表情も可愛いけど」
「な、かわ、」

何、何なの、なんて思った途端視界暗転。唇には柔らかい感触、唇?

「ごちそーさま。今日はこの位で勘弁してやるけど…」

明日からは我慢しねぇから。

彼は何事も無かったかのようにリビングへ。私の脳内ではさっきの言葉がぐるぐる反響。人はギャップに恋をする?そんな調査したの誰なの、それ、ああもう。

「…卑猥神…許すまじ…!」

顔から、身体から。熱が引かない。これ全部、君のせい。





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