一面、というより部屋中に広がる白と黒のツートンカラー。目がちかちかしそう。

「モノトーンが好きなの?」

この部屋の主である彼に問い掛ける。問い掛けてしまう程に、この部屋には他の色というものが存在しなかった。

「シックだろ?すっきりして見えるし」

コーヒーを淹れながらしれっと言い放つ彼を一瞥。彼はキッチン。私はリビングに悠然と置かれた真っ黒なソファに。少しの距離感。

「でも、やっぱり黒が目に付くね」

彼は2人分のコーヒーを持って私の隣に腰を下ろした。ホットコーヒーが暖かい。コーヒーの黒に呑まれてしまいそう。

「全然。白、強いだろ」

コーヒーから顔を上げ彼の顔を凝視する。全く意味が分からない。こんなにも黒は存在を主張して目立っているというのに。何を言っているのだろう。

「意味が分からない、って顔してる」
「分からないよ」
「ま、俺お得意の屁理屈な言葉遊びだけどな」

例えば。白と黒の絵の具があったとする。それを混ぜ合わせたら?黒は一旦白が混ざった時点で黒じゃなくなるだろ。それは白が混入したその時点で、量なんか関係なく、灰色だ。他の何色をも黒は呑み込むかもしれない。それでも白は、その黒を含めた何もかも飲み込んでしまうんだよ。

「そういう意味では白って何色をも含んでるだろ」

正に屁理屈でこじつけの言葉遊びにしか感じられない。

「ま、俺の中の白のイメージ。俺は白が好き」

私に白は眩しすぎる。なんて思いながらコーヒーを一口。

「ただ、包み込むだけじゃない。呑み込んで侵食して何もかも傷付けて痕を残すような…ま、上手く言えないけど」
「…私は、黒が好き」
「そりゃ好みは人それぞれだろ」

私は白にそんなイメージなかった。彼の中の白。どことなく荒々しくて、それでも優しくて。一度触れてしまえば、私の中から消えてくれない。彼と、重なった。

「私、白に溺れてるのかも」
「溺れるより、泳いだ方が楽しいんじゃない」

白に、君に。白を、君を、泳げるだろうか。どこまでも眩しく感じてしまうというのに。そんな不安が表情に出たのだろうか、彼はふと微笑んで私の肩に腕を回す。

「泳ぎ方だってゆっくり覚えりゃいいんじゃねぇの」

荒々しくて、優しくて、中毒になりそうなくらい魅力的な君を、泳げるなら。少しは白が好きになれそうな…少なくとも白のイメージが変わった、そんな気がした。





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