「名前ちゅわ〜ん!今日の食後のデザートどっちがいい?」

「んー、何と何があるの?」

「一つはパンナコッタのイチゴソース掛けイチゴのソルベを添えて。もう一つはチョコレートムースダークチェリーの洋酒付け風味、となっておりますマドモアゼル」


いつも通りのサニー号の甲板。ゾロは昼寝、ルフィとウソップとチョッパーはフランキーの工房で楽しそうに騒いでいる。本当にごく当たり前の風景の中、キッチンから飛び出してきたサンジが恭しく私にお辞儀をしながらデザートの選択を迫ってくる。ちなみにこれもいつもの光景。そして聞いただけでよだれが出そうになるのもお約束。いつもいつも選択式にするなんて、サンジはなんて罪深い男だろうか。


「ううう、どっちも美味しそうで悩むううう」

「名前ちゃんだったらどっちも食べたっていいんだぜ?」

「そうはいかないんです!唯でさえサンジのご飯美味しすぎてたくさん食べちゃうのに」

「はは、最高のほめ言葉だ」


うんうんと唸っているとサンジはポケットからタバコを取り出して口に咥えた。私に煙が当たらないようにわざわざ風下に移動してくれるところに、彼のジェントルマンさが際立つ。ナミやロビンだけでなく私なんぞにも完璧な女の子扱いをしてくれるんだから彼のフェミニスト精神はほぼ病気に近いとすら感じる。恐れ入りますわ。


「あ、じゃあ俺のと半分コする?」

「半分コ?」

「そう。一つずつ選んで交換すれば名前ちゃんどっちも食べれるだろ?」

「それは嬉しいけど、」

「じゃあ決まり。それとも俺とは嫌だった?」

「そそそそんな滅相もない…!寧ろサンジは嫌じゃないの?」

「嫌なら提案なんかしないさ!俺は名前ちゃんに誰より幸せになってほしいだけ」


ニカリと笑う彼の金髪がさらりと潮風に揺れてなんて綺麗な人だろうと思った。女の子になら誰にでも優しいのは解ってるのにこういうことがあると勘違いしそうになる。恥ずかしい女だ。自意識過剰め!


「…じゃあ半分コ、する」

「よし!そしたらみんなの食後の後にこっそり食べないか?ルフィがうるせえから。ちょっと待たせちゃうんだけど」

「うん、全然いいよ!片付け手伝うし」

「いつも助かるよ。あ、」

「ん?」


ふうと煙を吐き出してタバコをもみ消すと不意にこちらに近づいてくる。内緒話をする時のようなポーズでこちらを見るので彼の居る右側へ少し耳を寄せた。


「名前ちゃんじゃなきゃ、こんなことしないから」

「!!??」


少し低い甘い声が耳を擽る。爆心地の耳から一気に熱が身体中に駆け巡る。バクバクとした心臓を押さえながら彼を見やると至極嬉しそうな顔で小首を傾げた。ちょ、ちょっともうほんと勘弁してください!!



次の二択から一つ選ぶとしたら
(どっちも選ばせたいし、俺しか選ばせたくない)

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