「黄瀬くんのことが好きなの」


真っ赤な顔で俯きながら弱弱しい声で告げる名前も知らない女の子。
比較的可愛い部類に入るだろうその子は、昔の俺ならデートくらいしたかもしれないんだけど。最近じゃあまるでピンと来ない。というか何しろ本日5回目の呼び出しである。正直そろそろめんどくさい。


「ごめんね、今はバスケに集中したいんス。」


こくりと頷いて泣きながら去る後ろ姿にため息を零しつつ、体育館へ続く道へ戻る。
彼女に言ったことは真実で、嘘はない。でもそれだけじゃないのも本当で。


「…つまんないんスよねえ」


俺がちょっと優しくしたら女の子はすぐ好きになってくれる。まあ俺からしたら、恋ほど簡単なものはない訳で。(これ言うと反感買うんで口には出さないけど)いまいち夢中になれないのが本音。そりゃあ好かれることに悪い気なんてしないんだけど。零れた独り言は初夏の生ぬるい風に飛ばされた。


今は恋なんてつまんないことより、バスケ第一。


「さて、自主練再開っス!!」



MK5
(おーい、黄瀬。自主練終わったら笠松んち行かね?)
(え!行きたいっス!!)
(ふざけんな!来んな!!)
(いってえええ!なんで俺だけ蹴るんスかあああ!)
(じゃ、家行くから!)
(だから来るなっつってんだろ!!)

-------------------------

最初はゲス瀬風味?

×
- ナノ -