ピンポーン
控えめにゆっくりと鳴らされたその音に少しだけ意識が浮上する。ぼんやりとした頭のままベッドサイドの目覚まし時計を薄目で確認すると、時間は午前4時を少し過ぎたところ。いやいやこんな朝方にまさかチャイムなんか鳴らす人はいないはず。夢だきっと。
やれやれなんて思ってまたすっと眠りに落ちそうになったところで再度ピンポーンと鳴り響くチャイム。今度は確信した。あ、現実だわこれ。
もしや火事でも起きたかと一気に覚醒した頭で玄関に急ぐ。パジャマだけどしょうがない。


「名前…?」

「え、れお、?」


玄関まで歩みを進めると、扉の向こうから聞こえたのは聞き慣れた、でも久々に聞く声。鳴らしたのが彼ならば、きっと火事などではないだろう。安心を覚えながらも別の意味で慌てて鍵とチェーンロックを外して扉を押し開けると、そこに居たのは紛れもない隣人の実渕玲央だった。


「ごめんなさい、こんな朝方に…寝てたわよね…」

「え、いや、大丈夫だけど、今帰ってきたの?」

「ええ。さっき終わって提出してきたわ」

「そっか、お疲れ様。あ、寒いしとりあえず入って、」

「…どうかしてるわ私」

「へ、わ、」


久々に見る彼は何処となく切羽詰まっているような様子で、いつもの余裕を感じない。さっき提出したということは本当に今このマンションに着いたのだろう。家にも帰ってないようだし、とりあえず家に招き入れようとしたのだが、その瞬間。腕を掴まれてバタン、少しだけ大きな音をたてて閉まった扉の内側。なんとも言えない室内の静寂、背中に回る長い腕、心臓の音。え、なに、え?私、抱きしめられて、


「!?」

「ごめんなさい、少しだけ」

「れ、お?」

「、やっと会えた…」


染み込むような心地の良い低音が振り絞るように零した言葉は、私の心臓を握り潰すには充分な破壊力を持っていて。頭の血管が千切れそうなくらいドクドクと音をたてているのがわかる。な、ななななんなのほんとにどうしたのこの人は!??


「っ、れおっ?ちょ、あれ!?」

「ん…名前…」

「おもっ!え!?寝てる!?うわああ!!」


ケツいてええええ!! どすんと結構な音をたてて尻餅をついたためいやもうほんと下の階の人さっきからドアといいほんとすみませんこんな朝方に!!絶対後で殴り込まれる!!てかそんなこと考えてる場合じゃない!!

テンパった頭のままお腹あたりでスヤスヤと寝息をたてている巨体を呆然と眺めるも、いや、ほんとなんかもういろいろわけわかんなくて私は考えることを放棄することにした。



サプライズレイトショー
(…運べるのかな…私…)
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苦肉の策でカクテル名。
(寝酒)という意味だそう。
にしても久々ですみません!
しかもまたしても短い!!!



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