「今日も帰ってない、か」
玲央が卒制で篭ってから一週間が過ぎ、暦の上では秋になった9月。
インターホンを押して返事がないことに落胆するのは今日で三日目。そろそろ帰るだろうと軽い気持ちで始めたもののなんだかストーカーみたいで自分が少し怖い。けど、別にそういうんじゃないからね!?あまりに帰らないから心配ってだけで!!
「…寂しいなんて思ってないし」
確認を終えガチャガチャと鍵を雑に開けてパンプスをぽいぽいと脱ぎ捨てる。 買って来た四角い箱とスーパーの惣菜を雑然としたローテーブルに置いてジャケットをハンガーに掛けながら確認した時刻は8時半を指している。月末でもないのに無駄にバリバリ仕事をこなしてこんな時間になってしまう生活も既に一週間が過ぎた。
手洗いうがいをして部屋着に着替え、リモコンでテレビをつける。かかっていたのはしょーもないクイズ番組。しょーもないなんて思っていても人の笑い声が聞こえるだけこの寂しさも少しは紛らわせる気がしてそのままにした。こんなことを考えてしまうあたり非常に寂しい独り身OLの真髄を見た感がある。自分のことながら切ない。
きゅるると悲鳴を上げたお腹にはっとして、買ってきた惣菜を温めようと立ち上がる。電子音の中回るプラスチックの容器をぼんやり眺めながらため息を零す。チン!と小気味いい合図の音が鳴って、部屋にはまたテレビから聴こえる騒がしい声だけになった。
「 玲央に会うまではこんな生活だったんだよな、」
そう口から零れてなんだかたまらなくなった。
ご飯を作るのが面倒になったのは、
一人ご飯が寂しくなったのは、
家に帰るのが全然楽しみじゃなくなったのは、
どんなに強がっても否定してみても、答えなんかもうとっくに気がついていた。
思い出したように、ローテーブルにちょこんと置かれた四角い箱に手を伸ばす。
大事に入っているのは二つ対極に並んだアップルパイ。
「…玲央が好きなんだな、私」
全部あなたのせい
(年下とか釣り合わないとか、そんなの関係ない程に)
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久々ですみません…
そして短い。