「なんで!?なんでレオ姉女連れなの!?」
「なによ、いけない?」
「だってレオ姉の守備範囲っておと、ぐほあ!!」
「誤解を招く言い方やめて頂戴。」
「(玲央が男らしい)」
響くバスケットボールが弾む音とキュッキュという靴と床の擦れる音。まさに今私が居るここは懐かしき体育館なのだ。(と言っても区が運営してるスポーツ体育館だけど)
なぜ、私なんかがこんなところにいるのか。それは数日前に遡る。
・・・・・・・・・・・・・
「玲央とごはんするの久々だね」
「ごめんなさいね。卒制の区切りがなかなかつかなくて。やっとひと段落したわ」
「大丈夫。学生は本分を大事にしないとね」
「なによ一端に年上面して」
「年上だしー」
気がつけば7月が既に終わろうとしていて、季節はすっかり真夏。約1ヶ月ぶりの食事会は玲央宅で開催された。玲央が腕を振るった美味しいイタリアンに舌鼓を打ちながら、この1ヶ月なにがあったかお互いの近況を話す。楽しい時間はあっという間に過ぎ、お皿が全て空になった頃玲央からある誘いを受けた。
「今週の土曜日って会社はお休みかしら?」
「うん。休みだよ」
「予定がなければうちのサークルに遊びにいらっしゃいよ」
「サークル?」
「ええ。前に私がバスケする姿見たいーって言ってたじゃない?」
イタズラな笑顔でこちらにウィンクを寄越す玲央。いやまあ確かに言ったけど。そりゃあ、実はバスケの特待生としてインターハイ優勝常連校に進学してずっとスタメンな上本人もインターハイ優勝経験がある…なんて聞いたら、誰だってその姿を見てみたくもなるだろう。
でもサークルって、それは大学生がたくさんいるアレですよね?ウェーイウェーイって渋谷とかで盛り上がってるアレですよね!?(完全に偏見)まあ玲央はそんなことしてないだろうし、玲央がそういうサークルに居るとは思えないけど。でも私なんか連れてって大丈夫なのだろうか…
「いや見たいけどさ、若々しい大学生の中に行くのはかなり勇気が…」
「なに言ってんの年齢なんてそんな変わんないでしょ。それにサークルって言っても人数もそこまで居ないのよ。東京に居る高校時代のチームメイトとかと内輪でバスケしたくて集まってるだけだし」
「そうなの?私玲央の株下げない?」
「やだそんなこと考えてたの!?おばかね、ありえないわ!」
「いひぇひぇひぇ!!えお!!ひはひ!!はなひへ!!」
「全くあんたはもうちょっと自分に自信持ちなさい。」
「ひゃい…」
ぷんぷんと怒りながら結構な力で抓られた両頬はたぶん真っ赤になっていることだろう。痛い。痛すぎる。やっと離してもらい、見に行く日の待ち合わせ場所など確認をしてその日の食事会はお開きとなった。そんな流れが有りその当日。
「玲央!」
「よかったわ。迷わなかったみたいね」
「失礼な。玲央目立つし周辺に来ればすぐわかるよ」
「ふふ、目印に丁度いいでしょう?じゃあ行きましょうか。」
「はあい」
玲央に連れられるまま、すぐ近くの区営の施設へ入ると玲央は手馴れた様子で入館手続きをしながらここでよくやってるのよと説明してくれた。
すでにメンバーは来ているらしい。失礼な奴らだけど悪い奴らじゃないのよと玲央は少し困った顔で笑っていた。玲央の高校の友達か…人物像が謎すぎる…。
少しずつ体育館でバスケをしていたとき独特のあの音が聞こえ始める。うわあ、なんか懐かしいな。
そして、冒頭に戻る。
「そんで?レオ姉この子誰?」
「あんたはいつになったらその失礼さ直るわけ?」
「えー、ちょっとは成長したぜオレー。んで?」
数人が既に準備を始めている中、玲央をレオ姉と呼んで近寄ってきたひょろっとした猫目な男の子。新しいおもちゃを見つけた子供みたいなその表情はなんだかすごく本能に忠実、という感じが滲み出ている。と、とりあえず自己紹介しなきゃかな。
「あ、実渕さんと仲良くさせてもらってます、名字名前です。」
「名前ちゃんね!学年は?レオ姉と一緒の大学?どこで知り合ったの?」
「えっ…、」
「名前が引いてるからやめて頂戴」
ものすごい勢いで質問を飛ばして、だって気になるじゃーん!!とぶーぶー言っている彼は葉山小太郎と言うらしい。玲央に促されてようやく自己紹介をしてくれた。なんだか玲央がお母さんみたいだ。
「もー、レオ姉過保護すぎ!!俺は名前ちゃんと話したいの!」
「過保護で結構!名前はあんたと違って人見知りなんだから!ってこら待ちなさい!」
「名前ちゃん!」
「えっ、はいっ、って、うえええ!?」
「ごめんちょっとだけダッシュね!レオ姉ー名前ちゃんとジュース一緒に買ってくるぜー!!」
「コラー!!小太郎ーー!!」
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