最近の私はなんだか変、です。


ゆっくんたちが合宿に向かって早3日。今年は確か1週間と言っていた気がする。
そのあとすぐに公式戦が控えているらしいから、まあ調整合宿みたいなものらしいけど。夏休みの課題と睨めっこしながら、今頃頑張っているだろう幼馴染みとその仲間達のことを考えていた。


ゆっくんは無理してないかな、森山くんはまた今年も可愛い子を探してるだろうか。
小堀くんはきっとゆっくんを助けてくれてるんだろうな。あ、早川くんはまた騒いでゆっくんに怒られてるのかな。あと、


「キセリョ、くん」


今年はもう一人、仲間が加わった。キセキの世代の黄瀬涼太くん。十年に一人の逸材ってゆっくんが言ってた男の子。


「頑張ってるかなあ…頑張ってるだろうな」


口に出した予想は、すぐに確信に変わる。行く直前にあんなに意気込みを話してくれたんだもん。きっと頑張ってるに決まってる。
机にシャーペンを置いてクローゼットに向かい引き出しの一番上、小物入れになっているそこを開ける。そこには、以前キセリョくんからお返しとしてもらったひよこの刺繍のハンカチが鎮座している。黄色地に小花をあしらった可愛らしいそれは、最初の印象のキセリョくんからは想像つかないセレクト。でも今は、彼なら選びそうだなあなんて顔が綻んでしまうくらい納得がいく。彼は、自分のことを冷めてると思っている節があるけれど、間逆だなと思う今日この頃だ。
真っ直ぐで、がむしゃらで、繊細。故に、ちょっとだけ心配だけど。


「名前っち先輩、俺勝ちます。だから、見てて下さい。」


「あの、もしインターハイ優勝したら、…名前で呼んでくんないっスか…?」




「っ、」


やっぱり、私変だ。

思い出して頬に熱が篭るのがわかる。あんなの反則じゃないかなあ。私だって女の端くれです!!
あんなに真剣な顔初めて見た。あんなに照れた顔も初めて、ちゃんと意識して見た。あの時は、ちゃんと誤魔化せただろうか?
ハンカチを握ったままベッドにダイブして、窓から見える青い青い空を見上げる。隣に燦々と輝く太陽は、キセリョくんの髪と同じ色。


「頑張れ、頑張れ。…りょーたくん」


口からついて出たのは、勝ったら呼ぶはずの彼の名前。言って更に熱くなった。扇風機付けよ。機械音の後吹いてきた人工的な風に当たりながら、処理できない名前も知らない感情に蓋をするように瞼を閉じた。



名無しのハートに名前を付けて
(はっ、ゆっくんたちに見せてあげるために課題やらなきゃ!!)

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初めての名前ちゃん視点
まだ気付きません。

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