うちのクラスの火神くんは、俗に言うオカン属性というやつだ。


「なんでここでそんな散らかるもん食うんだよ!!」

「…おいしいから…?」

「なんで疑問系!?」


あーもう!机も口元もきなこだらけだぞ!お前女だろ!
そんな風に悪態をつきながらも、ちゃっかりポケットからティッシュを取り出して真っ先に私の口を拭ってくれるところがほんとオカン。ちょっと乱暴で痛いけど。(きっと火神くん的にはそんな力込めてないんだろうけどね)そんでこんな野生的な見た目とは裏腹にポケットにティッシュとハンカチを忍ばせてる辺りかなりギャップ萌えだと思います。お育ちのよさが滲み出ちゃってるよね。


「火神くん、そんな強く擦ったら名前さんの唇が腫れてしまいます」

「うおおお!!だからお前は突然現れんな!!」

「黒子くんずっと居たよ?」

「はい。居ました。いい加減慣れて下さい。」

「ほんとヤダ…」


ぶつくさ言いながらも机に散らばったきなこも処理し始めた火神くん。その様子を見守りながら、今度はよっちゃんイカに手を伸ばす。すっぱい匂いが辺りに広がって、片付けに勤しんでいた火神くんにもバレてしまったらしい。やべ。そう思ったのも束の間、目を吊り上げて怒る火神くんに、周りに迷惑をかけるものを食うな!とチョップを食らった。痛い。でも確かによっちゃんはやりすぎたと思ったので教室の窓を多少開けることにした。すっぱいもんね。


「なんなんだ今日は!駄菓子シリーズか!紫原か!」

「昨日買い貯めしたんだー。はい、黒子くん。笛ラムネあげる」

「ありがとうございます。」


横でヒューと遠慮がちに吹かれる笛ラムネ。黒子くんらしい。
むらさきばらくんって誰だろうなあ、なんて笛ラムネを吹いている黒子くんをぼんやり眺めながら考えていると、私たちの様子にがくりと項垂れて呆れモードに突入した火神くんが目に入った。


「火神くん」

「…なんだよ」

「いつも面倒見てくれてありがとう」


項垂れる火神くんに近づいて、BIGサンダーと書かれた包装紙のそれを恭しく献上する。一瞬何が起こったのかわからないという表情をした火神くん。
包装紙の色合いもBIGというところも、なんだか火神くんを彷彿させるそのお菓子。いつものお礼の気持ちも込めて火神くんにあげたかったのだ。


「…調子狂うな。ま、サンキュ、な。」


火神くんはバスケに明け暮れるその大きな掌でぽんぽんと私の頭を撫でて、照れくさそうにそれを受け取ってくれた。嬉しくなってにっこり笑うとヘラヘラしてんじゃねえよと頭を小突かれて。でも今度は痛くない。火神くんのこういう照れ屋なところもオカンなところも、バスケにかける熱いところも。全部私の心をぽかぽかにさせる。なんでなのかは、よくわかんないけど。

ばりばりと包装紙を開けてガブリとチョコに食らいつく姿は見た目の通りに野獣っぽい。じっと見ていると、食うか?と一欠片おすそ分けを頂いた。もぐもぐもぐ。二人してリスのように咀嚼していると笛ラムネ(2個目)を吹いていた黒子くんがふ、と笑った。珍しい!いいもん見れた!


「火神くんは名前さんに対しては本当にそのお菓子みたいですね」

「…うるせえな」

「黒子くんそれどーゆー意味?」

「火神くんは…」

「わああああ!!黒子言ったら殺す!!」



真相はキャンディボックスの中
(お前を甘やかすのは俺だけで十分だ)

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かがみんは世話焼きつつ好きになちゃって釈然としない。
女の子は完璧に恋してるのに気付いてない。
黒子は二人を見ながら楽しんでる。

この三人可愛くて楽しかったです。笑

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