広い体育館にバスケットボールの弾む音が木霊する。俺しかいないんだから当たり前だけど。


「98本目…」


今日は誠凛と桐皇の試合のため、黄瀬の奴は見に行くと言っていて。ものすごい勢いで行きましょうよー!と誘われたが今日は一日自主練と決めていたのでしつこいと一蹴して一人で送り出したのだった。
100本目を打ち終わって、一旦休憩に入る。タオルで汗を拭い、持参したボトルで水分補給しながら今は調度試合が終わった頃だろうかと思案する。ま、それよりもまずは自分たちのコンディション調整のが大事だが。


散らばったボールを集めながら、昔の記憶に思いを馳せる。
こうやって体育館で自主練に励んでいると無償に中学時代を思い出すのだ。


あの頃は自主練というと、しょっちゅう名前が着いてきていて。蒸し暑いと文句を言いながらもなかなか帰ろうとしない幼馴染みにしょっちゅううるせえとデコピンを食らわせていた。でもなんだかんだパス出ししてくれたり飲み物を買い足してくれたりと手伝いはしてくれていた彼女に、最終的にはアイスを奢ってやってたんだっけ。(ま、1本60円のアイスだったけど)


「ゆっくんはさー」

「んー」

「バスケするために生まれてきたんだろうねー」

「…お前よくそういう恥ずかしいこと言えるよな」

「思ったことは口にするのが信条デス!」

「あっそー。俺より上手い奴なんてごまんといるぞ」

「違うよ。上手下手じゃないよ」

「ん?」

「そう言ってもいいくらい、ゆっくんが努力してきたの私は知ってるから」

「…おう」

「ずーっと見てきたんだもん」

「おう。」

「それに上手いか上手くないかだけで試合は決まらないでしょ!」

「まあな」

「ほらほら!パス出ししてあげる!」

「どわっ!!どんなキラーパスだてめえ!!」



いつだって恥ずかしいことを微塵も照れずに言う名前。
救われたことも多々あるだけに悔しいが。



「さて。再開すっか。」


人のことばっか考えてヘラヘラしてるお人好し。自分の為に泣くのが苦手なあいつを今まで守ってきたのは俺だったけど、


「名前さんのこと守りたいんス」



どうやらそろそろ世代交代みたいだ。



「ちっ、でもよりによって黄瀬かよ」


零れた独り言は少しの嫉妬を孕んでいた。もちろん、恋愛のそれではないのだが。

でもアイツになら名前を任せてやってもいいかな、なんて思ってしまってるのも事実。いくら鈍感な俺でも、アイツのあんな真剣な目はバスケ以外で見たことなかったから。

とりあえずは、泣かせたら絶対シバく。そう誓って放ったシュートは一際弧を描いてゴールに吸い込まれていった。




大事な幼馴染み
(笠松センパーイ!)
(おま、決勝リーグは?)

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微原作沿いな笠松独白

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