「キャプテーン!!」

「なんだ朝から騒々しい」

「名前が、名前がすげえんです!!」

「…は?」


“この船に居たいなら俺の役に立て”
ローさんのこの言葉を私なりに考えた結果、雑用に励むのが一番性に合ってるという結論に落ち着いた。ていうかそのコマンドしかなかった。だって戦闘員として手柄を上げることなんてとてもじゃないが不可能だし。無理無理。となると今までの極貧生活で培った節約術やら生活の知恵やらをフル活用して雑用をするのが一番なのだ。邪魔にもならないし。


人知れず気合を入れた私は、まず手始めに一晩過ごした倉庫(ペンギンさんたちはこんなところですまないなんて謝ってくれたけどベッドはちゃんとあったし十分どころか現世で野宿しようとしてたしむしろ天国だった)を片付け、そのあと朝食を準備するコックさんに混じって皮むき等の下ごしらえを手伝い、食堂の準備、甲板、廊下の雑巾掛け、生活備品倉庫の在庫数のチェックと整理整頓、溜め込まれたツナギの洗濯(染み抜きも忘れずに)などなど、私が介入しても問題なさそうなところの作業を実施した。一通り終える頃には船員たちがぞろぞろと食堂にくるところで。我ながら見違えるほど綺麗になった船内に、起きてきたベポたちも目を丸くしているようで。あ、よかった!なんか感謝されてるっぽい!


「床も壁もピッカピカ!名前がやったの?」

「あ、うん。掃除だったら私が手出しても怒られないかなあと思って…」

「洗濯もちゃんと染み抜きまでしてある」

「備品倉庫も上手いこと収納されてんぞ!主婦かお前は」


シャチさんにツッコミを頂いている中、やはり表情を変えないのが約1名。うわーこえー。やっぱダメだったのかな。俺の船に勝手になにしてくれてんだ的なかんじかなこれは。


「…あの、ローさんやっぱ勝手にいじったの怒ってんですかね…」

「ふ、そう見えるか?」

「え、」


あまりの怖さにペンギンさんに話しかけるも、目深に被った帽子からは表情は覗えない。だが口元は弧を描いていて。え、わかんの?あれ怒ってないってわかんのペンギンさん。困惑しているとローさんと目が合って手招きされた。うわやばいどうしよ。


「おま、」

「すみません!昨日のローさんの言葉を考えに考えた結果このようなことしか浮かびませんで調子に乗りすぎました反省して」

「話を聞け。バラすぞ」

「ひゃい」


つらつらと先手を打って言い訳を並べるのが癪に障ったのか頬をつねられた。いたたたた。恐る恐る目を見ると、あれ、そんな怒ってなさそう。だったら離してくんないかな痛い痛い伸びてしまう。若干涙目になりつつ見上げたその表情は穏やかだった。


「これ全部お前がやったのか」

「うえ、はい。ご飯は下ごしらえのお手伝いだけですけど…洗濯掃除整理整頓は、一応」

「へえ」


やっと離してもらえた右頬をさすりながら(ものすごくじんじんする絶対この人ドSだ)聞かれたことに答えていく。ローさんあんま興味なさそうだけど。


「上出来だ」

「へ、」

「お前のその貧乏性はこの船の総務の役に立ちそうだ。」

「びん…」

「頼んだぞ庶務屋名前」


初めて名前を呼ばれたかと思いきや、なに庶務屋って。なんすかその呼び名。てかこの世界にも庶務とかあんの。いろいろと言いたいことはたくさんあったが、とりあえずはこの船でお世話になる為の第一関門はクリアしたようだ。昔取った杵柄というやつだな。今だけは父に感謝してやろう。


「野郎共、新しいクルーだ。歓迎してやれ。」

「アイアイキャプテン!!」

「あ、名前です!えーと、庶務やります!宜しくお願いいたします!」



庶務になる
(江角マキコは程遠いけども)

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