「よく来たな名前」

「あ、あの、お招き頂きありがとうございます!すみません私なんかがこんな厳かなと所に…」

「わらわが呼びたくて呼んだのじゃ。そう自分を卑下するでない」


ピシャリとした言葉の中にも私を気遣うような言葉をくれるハンコック様どんだけ女神…。今にもははーっ!と平伏しそうな気分で玉座の前で正座をしていると何処からともなく官女のようなこれまた美人たちが現れて湯気の立つ湯飲みを丁寧な所作で置いてくださった。うわすいません!と反射的に謝ると穏やかにニコリと微笑んで静々と去ってゆく。装飾が綺麗な茶碗からはとても馨しい香りが漂ってきて、なんだろう、お花みたいな…ジャスミンかな?少しだけ緊張感がほぐれるくらいいい香り。出されたから飲んでいいのかなと恐る恐るこくりと一口、口に含むと更に豊かな香りが鼻腔から口腔全部に広がった。わー、美味しい。


「あ!麦わらさんの術後の経過を書き留めたノート、持って来ましたよ」

「それはありがたい。ルフィの様子はどうじゃ?まだ目は覚めぬか」

「そうですね…まだ少し掛かりそうです」

「そうか…」

「…」

「…」


…気まずい。会話が途切れとてつもない静寂がだだっ広い宮殿の玉座の間に広がっている。ゴクリと私がお茶を嚥下する音すら響いていそうだ。あの、妹さんたちもなんかソワソワしてる気がする。どうしよう、シーンって音が聞こえてきそう。聞こえる訳ないのに。


「…えーとあの、ノートも渡せましたし、お忙しい中お手を煩わせるのもなんなのでそろそろお暇した方が…」

「もう帰るのか?まだ来たばかりではないか」

「え?」

「そうじゃ。もう少しゆっくりしていかれよ」

「それが良い…って、だからなぜ其方がここにおるのじゃ!ニョン婆!!」

「どこからでも入れると言ったであろう!」


突如現れた小さなおばあさんは、まるで今までここに居たかようにお茶を啜っている。え、誰これ!そしてハンコック様がノリツッコミをした上なんだかとても普通の人のように怒っている。とても失礼だとは思うがなんかちょっと親近感。


「えーと、この方は一体…」

「先々々代皇帝のグロリオーサよ。今はニョン婆と呼ばれてるわ」

「これでも私たちの恩人なの」


未だニョン婆さんとハンコック様の言い争いが続く中、私はと言えば退室するに出来ずとりあえず湯呑みを両手に持ったままその光景を妹さんたちと静観しているしかなかった。


「やっと出来た友人なのであろう?」

「っ!ニョン婆!」

「友人?」

「名前と言ったか。蛇姫様はこの歳まで友と呼べる者はおらんでな。今まで自分と対等な人間ニャど居ニャいと思っておったニョじゃ」


ぶすっとした表情ではあるもののニョン婆さんの言う言葉を否定するでもなく顔を背けたまま長い脚を組んでいるハンコック様。妹さんたちも心なしか少しだけ嬉しそうな表情で。本当にに七武海に入るような女海賊なのかと疑うくらい、まるで少女のような表情だった。


「だが蛇姫様はそニャたとは対等で居たい様子」

「…へ!?」

「その茶を振舞っておるのが何よりの証拠。それは蛇姫様専用でな。わざわざ海を渡り取り寄せている代物じゃ。通常なら他人に振る舞うことなどせニュ。」

「…その辺にしておけニョン婆」

「ふふふ。少しお節介が過ぎたかニョ。名前殿、蛇姫様は誠に不器用な御方。面倒とは思うが仲良くしてやっておくれ。」


真っ赤なハンコック様が面倒は余計じゃ!とニョン婆様に怒るが、全く怖くなかった。天使だった。いや女神だった。


「私なんかが仲良くして頂いていいんですか、ね?」

「…だからなぜそう自分を卑下する。わらわを否定するのか」

「め、滅相も御座いません!…嬉しい、です」

「……そうか」



友達ができる2
(あんなむさ苦しい船など降りてここに住んでしまえばいい)
(えええ、)
(蛇姫様。おんニャ友達には距離感が大事ですぞ)


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書き終わったら蛇姫夢になってた。170120 みつこ

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