「ごめん、ベポまで巻き込んじゃった」

「いいんだ。部下の面倒をみるのも上司の仕事だって前にペンギンが言ってた」

「ふふ、ベポ先輩あざっす」


他の船員の目に付くのが嫌だと言った名前をこっそり抱えて連れてきたのは彼女が一番安心するだろう場所。備品倉庫だ。体の大きいおれには少し狭いけど、名前にはとても落ち着く空間らしい。壁側のランタンに火を燈し背を預けて二人膝を立てて座る。その瞳には先ほどの涙は見えないけれど、浮かべる笑顔にいつもの元気は見当たらなかった。


「…二人に何があったか、おれはわかんないけど」

「うん」

「おれはキャプテンのこと尊敬してるし、名前のことも好きだ」

「ふふ、私もベポ好き」

「きっとキャプテンも、名前のこと大事にしてる」

「……うん、知ってる」

「…ほんとは、名前には言うなって言われてたんだけど、今言わなきゃいけない気がするから言う」

「?」


名前をシャボンディ諸島に連れて行くか行かないかの騒ぎのあと、おれも聞きたいことがあってキャプテンを引き止めた。それはどうしても気になったこと。


「ねえキャプテン」

「…今度はベポか」

「うん。名前を連れて行かないのってヒューマンショップも関係してる?」

「…」

「…名前って不思議なニオイがするんだ。初めて嗅ぐニオイ。野蛮なことに耐性がないのってそれと関係あるんでしょ?だからキャプテンは名前に過保護なんでしょ?」

「…鼻が利きすぎるのも考えもんだな」

「おれは名前がどこの誰だっていいんだ。仲間だってことに変わりはないし」

「…」

「船長が思うほど名前は弱くないと思う。もっと汚いとこ見せても名前なりに向き合うと思うよ」



「…それでも、見せたくないんだって」

「…」

「『あいつが平和な顔してヘラヘラしてないと調子が狂う』んだって」


本当はもっと憎まれ口叩いてたけど全然隠しきれてなかった。キャプテンが名前を大事に思ってること。名前が無用な重荷を背負わないように、名前がいつも笑顔で居られるように。名前が仲間に加わってからキャプテンはだいぶ丸くなったと思う。

名前は全ての話を聞き終わると膝に顔を埋めながら大きな溜息を吐き出した。上げた顔は泣いてなんかなくてむしろ清清しい顔をしている。困ったように笑うその顔はさっきの作り笑いなんかじゃなかった。


「…船長はほんっと自分勝手で、困った人だね」

「ふふ、ほんとだよね」

「ベポ、私なんか腹立ってきた」

「うん。おれ怒っていいと思うよ」

「だよね?勝手に繊細とか幻想抱かないでほしいわ。ビビリなのは否定しないけど」

「否定しないんだ」

「私船長室に殴り込んでくる」

「おう!上司として許可する!」

「あざす!先輩行ってきます!あ、あと一個お願いがあります!」

「なに?」



激励される
(名前のお願い、キャプテンが許可するかな…?)


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ベポは鼻が利きそうという話。

あといつの間にかローさん過保護になってた。…妹いたしきっと過保護属性あるよと言い聞かせてます。

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