「シャチ隊員、これは不味い状況ではないか?ドーゾ」
「名前隊員、同じこと思ったぜドーゾ」
「出るに出れないけどどうする?ドーゾ」
「とりあえずその前にこのやり取りやめねえかドーゾ」
「それもそうだねドーゾ」
「言ってる意味解ってねえだろドーゾ」
とある島に停泊中の私たちハートの海賊団。(ごめん島の名前聞いたけどカタカナだから忘れた)詳しいことをまだまだ理解出来ていない私にはその仕組みがよく解っていないが、ここの島の【ログ】とかいうものは3日らしい。(なんでもその【ログ】なるものが溜まらないと出航出来ないのだとか)そんな訳で、この島でも美味しいと評判の酒屋で到着記念と題した宴の真っ最中なのだ。
が、
現在私とシャチは店の裏でとても気まずい状況に出くわしてしまっているのである。なにってあれだ、あれ。
「…あの女の人この街で一番の美人看板娘って謳われてた人だよね」
「ああ。ちなみに俺はめっちゃタイプだ」
「聞いてねえよ。てかすげー積極的!腕絡ませちゃってるよ!パイオツカイデーだよ!」
「お前はオヤジか?いーなーさすがキャプテンだよなー」
「あ、やっぱおモテになられるのかね船長は」
「おモテになるなんて問題じゃねーよとっかえひっかえだよ。」
「ひえー!不潔!」
「あーキャプテンにちくったろ」
「嘘嘘。さすがですよね。男の甲斐性ってヤツですよねシビレルー!」
「お前ほんっと適当な奴な!」
ひそひそとそんな会話をしながらお色気ムンムンなその光景を盗み見る。これすごく趣味悪いんじゃないかな見つかったら殺されそうだななんて思いながらも見るのをやめられないのは人のサガというものだろう。うん。
いやあそれにしてもあの人すごい。なにって体型が!正にナイスバディという言葉を体現したような人だ。出るとこ出てて、締まるとこ締まってる。(下品でごめんね)自然ともの寂しい自分のツナギに目が行くが悲しくて直視出来なかった。(そんな私に気付いてシャチがポンと肩に手を置いた。殺すぞ。)
にしても船長ってばあんなグラマラス美人に迫られてもよくあのポーカーフェイス保ってられるな。やっぱそれも男の甲斐性ってヤツなんでしょうかね。隣のシャチさんは自分が迫られてる訳でもないのに鼻の下伸び伸びなのにネ。モテないのって悲しいネ。
「でも変だな」
「なにが」
「いつもならこのへんでキャプテンの手が伸びてきてそのまま夜の街へ消えてくところなんだけどな」
「てかいつもそこまで見てんのかよシャチキモイよ」
「うるせえぞたまたまだ」
たまたまかどうかの審議は置いとくとして(おいこら信用しろよとか言ってるけど無視)、確かに船長の方は乗り気では無さそうで。むしろ煩わしそう?つれない態度もおねーさんの狩猟本能に火を着けてるのも事実っぽいけども。すっかり抜けてしまった酔いで寒い中の出歯亀はそろそろ限界に近い。もうどっちでもいいからそこからどいてくんないかな。トイレそろそろ本気で我慢も限界なんだけど。
「あ、やっとなんか喋りましたよ船長」
「あ、女怒った」
「あーあ、行っちゃった」
「勿体ねーなー」
「…おいずいぶん前から楽しそうだな」
「「!?」」
「バラされたくなけりゃ素直に出て来い」
「「…はい…」」
船長の視線は明らかに私たち二人に向かっていて。やばいまじでこれやばいどれぐらいやばいかっていうとまじでやばい。すごすごと二人で船長の前まで行くとそれはそれは不機嫌そうな船長が居た。自主的に正座したのは当然の反応だと思う。(つか本能?)
「覗きは楽しかったか?」
「…いや…そんなことは…」
「シャチ。お前にはあとで話があるから戻ってろ」
「…うす…」
若干半泣きのシャチを見る限り話というかバラされるんだろうなと理解して。てかシャチいないとかやばくね?私なにされんの?今日の船長マジ怖いんですけどおおおおお
「名前」
「…はい」
「俺はとっかえひっかえはしてねえ」
「…はあ…?」
「あいつらが勝手に来て勝手に去ってくだけだ」
「……いや、それをとっかえひっかえって言うんじゃないすかね」
「うるせえ」
「ひゃいしゅみあへん」
痛い痛い痛い伸びるっつの!!なんて今の状況じゃ言えない為なんとか耐えつつ涙眼で謝ると大きなため息をひとつ吐いてくだらねえことしてんじゃねえと船長は吐き捨てた。はあ痛かった…
「…でも船長ほんとによかったんですか?」
「あ?」
「私たちのせいで船長のモテモテタイムを妨害してしまったなら申し訳ないと思いまして…」
「……」
その直後に見た船長の表情は顔全体に【こいつ本物のバカ?】と書かれているようなそんな蔑むような表情だった。なにその反応!?
「…バカすぎて怒る気も失せた。」
「だからなんなんですか!その癪に障るかんじ!」
「癪に障ってんのはこっちだバカ野郎」
「えええなんで!?」
出歯亀する
(…なんでこいつがなんとも思ってないことに俺が腹立てなきゃならねえ)