「これとこれとこれ、あとあれもだ」

「承知致しました。」


可愛らしい洋服や雑貨と隈のひどい強面すぎる男(ただしそれ以外はイケメン)。なんだこの見事なまでに不釣り合いなコンビネーションは。なにがどうしてこんなことになっているのだろうか。



遡ること今から一時間ほど前。島に着いたぞー!というクルーの雄叫びで船内はお祭り騒ぎだった。私も初めて見る島に逸る気持ちを抑えられずに甲板から島を眺めていたのだけど。突如やってきた船長に手招きされついていくととんでもない発言をされたのだ。


「お前は今日俺と行動しろ」

「…へ、」

「シャチとベポは買い出し。ペンギンはこの島の情勢の調査。他のクルーも仕事がある。戦えないお前のお守りは必然的に俺しか居ない。よってお前には拒否権はない。」

「…すんません…」

「わかったら行くぞ」


まさかまさか船長が私のお守を引き受けてくれるとは微塵も思っていなかった私は困惑したまま、足早に船を降りていく船長を駆け足で追いかける。
船長の無駄に長いおみ足のお陰で追い付くのが大変すぎるぞ。(怒られるから口には出さないけども)それでも、都度ちらりと確認しながら歩いてくれるだけ、心配はしてくれているようだ。なんだか申し訳ない。


降り立ったこの島はどうやらかなり栄えている島のようで。街には所狭しといろいろな店がひしめき合っている。(あ、あのお店可愛い)あまりに無駄のない船長の足取りに、初めて降りる島じゃないのかななんて思いながらただただ船長に着いて歩く。そんなことを考えていると、船長が急にぴたりと歩みを止めた。初めての街におのぼりさん丸出しできょろきょろしていた私はそれに全く気付かず、盛大な頭突きをその背中にかましてしまった。冷たい視線が痛いです船長。てか背中硬すぎ。どんだけ鍛えてんすか。


そのまま無言で元来た道を戻る船長。え?間違えたの?方向音痴とは無縁そうなイメージのある船長にそんなことあるのかなんて困惑していると一軒の店に戸惑いなく入っていく。入っていったのは先程私が目を奪われたお店で。もちろんそこは女物しか扱ってないようなところで。え、なにどういうこと。


…そんなこんなで冒頭に戻る。


「あ、ああの船長」

「なんだ」

「こんな大量の女物どうするんですか?現地妻へのプレゼントですか?」

「…お前は馬鹿か」

「へ、」

「この島には初めて来た。そんなもんいねえ。」

「あ、じゃあこれから引っ掻ける女の子に…いだだだだだ!!!」

「てめえ俺にどんなイメージ持ってやがる」


久しぶりのアイアンクローにギブアップを意思を伝えるべくその刺青だらけの腕を叩く。はあはあ…うう、痛かった。
だって船長があんまりにも手慣れた風に女物の店に入るんだもの。そうだと思ってもしょうがないじゃないか。なにせ見た目もスタイリッシュで女の子も放ってはおかないビジュアルですし。(ほら、店員のおねーさんは早くも獲物を狩る目だよ)


「…いつまでもそのツナギ着させとくわけにいかねえだろ」

「は…?」

「黙って受け取っとけ」


素っ気なく言いながらボスリ、被された帽子。(あ、耳が隠れて暖かいやこれ)
そういえば、シャチもペンギンさんも何かしら帽子を被ってたのを思い出した。鏡に映ったオレンジと白のボンボン付きのニット帽。なんだか仲間だと認められたようで、暖かな気分になる。私の勝手な思い込みかもしれないけど。


「船長、でも私このツナギ好きですよ」


会計に向かう船長の背中に話し掛ける。ぴくりと反応しつつも無言。怒らないってことは、このまま聞いてくれるってことだろう。


「ハートの海賊団のクルーだって、仲間だって実感するんです。だから、私このツナギがいいです!」


精一杯の勇気を出して伝えたのはほんとの気持ち。無言のまま会計を済ませ紙袋をおねーさんから受け取り、それをこちらに突き出した。


「…好きにしろ」

「え、あ、お金」

「お前の取り分からきっちり引いてある。着るも着ないもお前の自由だ。」

「まじすか用意周到なことで…はい。」


紙袋を受け取って抱え込む。そらそうだ。私なんかにプレゼントするわけないよな。なに勘違いしてんだか。
だが、私のあの精一杯の気持ちへのあまりのスルーっぷりにはしょんぼりするぞ。船長はやっぱドライな人なんだな。ちぇっ。


「…なにしてる」

「え、船こっち…」

「アホ。これから仕立屋だ」

「仕立屋?」

「お前のツナギ、サイズ合ってねえだろ」

「まあ男用ですもんね。それがなにか…」

「…だから、お前のやつ作んねえとなんねえだろ。全部言わせんじゃねえアホ」

「いったあああ!!」


スパコンと小気味よく刀の柄で殴られた。いちいちいちいち殴ったりアイアンクローしたりしなくてもよくない!?どんだけドSなのよ!
だが、涙目で見た船長の顔はどこか照れているようで。なんだかおかしい。なんだよ、しっかり伝わってるんじゃないか。素直じゃないんだから!


「…殴られてにやにやするとかお前マゾか」

「それは違いますけどっ!えへへ!せんちょー!私もベポと同じオレンジがいいです!」

「勝手にしろ」



買い物する
(…なんで船長私の服のサイズわかったんだろ)


おまけ


「まさか船長自ら買い物連れてくとはなー」

「まあなー。あの人何か無い限り一人行動だもんな」

「そうそう。俺らですら邪険にされるもんな」

「…名前相当気に入られたな」

「…ああ。でもキャプテン愛情表現歪んでるからなあ…」

「ご愁傷様だな名前…」



「へっくし!!」

「バカのくせに風邪か」

「なんすかそれ!いやたぶん誰か噂してるんでしょうね私の」

「ああ、バカだなってか」

「いい加減そこから離れてくんない!?」

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