兄弟△



右手でルカくんと、左手でコウくんと。
それぞれ手を繋いで歩く町並みは、いつもと全然違う。少し狭く感じる道幅が、何だか守られているみたいに感じられてくすぐったい。
季節はもう冬で通りすぎる風は冷たかったけど、繋いでいる手から、くっつく腕から、優しい温もりが伝わってきた。

「みなこ、寒い」
「もうちょっとだから、我慢」
「だから手袋もしてけっつったろ」
「やだ。みなこの生の温もりのが大事」
「アホか」

West Beachでお鍋をしたいと言い出したのは、ルカくん。
この間三人で行ったフリーマーケットで見つけたお鍋セットを、早く使いたくてたまらないみたい。
お鍋の材料をみんなで買いに行ったスーパーで、ついでついでとお菓子をドサドサかごに入れるルカくんを叱るコウくんと私。
家族みたいね、と笑ったら、複雑な顔をしたコウくんとルカくん。

「やっぱり、コウくんはお兄ちゃんって言うよりお父さんだね」
「オマエな、まだ言うかそれ」
「俺、お前が母さんってヤダ」
「え、酷い!」
「だから、みなこは俺のお嫁さん。お父さん、娘さんを俺にチョーダイ」
「誰がやるかバーカ」

頭上で言い合う二人は、本当に仲良し。ちょっと、寂しくなっちゃうくらい。

「…私も男の子だったらよかったな」
「ああ?何言ってやがる」
「ダメダメ、そんなのお父さんが許しません」

あれ、今度はルカくんがお父さんになっちゃった。
ふふ、と笑ってもやっぱり感じる疎外感。兄弟になれなくても、男の子だったらもっと一緒にいれたかもしれない。喧嘩はできる自信はないけど、気持ちは分かってあげられたかもしれない。守られるだけじゃなくて、守れたかもしれないのに。
全部憶測でしかないけど、考えずにはいられなかった。

「みなこ。俺はオマエが女の子でよかったと思ってるよ」
「……ほんと?」
「うん。みなこが女の子じゃなかったら、こーやって甘えられないでしょ?俺らがこうしていられるのは、オマエの傍でだけだよ」

きゅ、と強く手を握って、体を擦り寄せるルカくん。
くすぐったいけどあったかい。
コウくんもルカくんの言葉に合わせて、強く手を握った。
ぎゅうぎゅう、おしくらまんじゅうをしてるみたいにくっつく二人。
歩きづらかったけど、二人の気持ちが嬉しくてうっすら涙が浮かんだ。

「おら、早く帰って鍋すっぞ」
「「おー!」」

三人で海岸沿いを歩く。
北風は酷く冷たかったけど、繋いだ手はあたたかかった。




100820-101005

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