sweet H・N・Y! 1



12月も、後少しで終わる。
今年もいろんなことがあったなあ、なんて思い巡らせても、視線は常にテレビに釘付け。
年末から年始にかけて特番が多く、録画しても追いつかない。お笑い番組は録画して後で見るとして、とりあえずは紅白だよね。

ベッドを背もたれにしてクッションを抱き、視線をテレビに向けたままテーブルに置いた飲み物を取ろうと手を伸ばす。
すると、こん、と指に何かが触れた。

「わり」
「ううん。あ、嵐くんのコップ空だね」

同じようにテレビに夢中だった嵐くんが、同じタイミングで手を伸ばしていた。テーブルの上には並んで置いてあるお揃いのコップ。
今年の春に大学生になって一人暮らしを初めてから、私の部屋には少しずつお揃いの物や男物が増えていった。

二つ組の食器、大きめのスエット、替えの下着、色違いの歯ブラシ。それに、嵐くんの私物もこの部屋にはいくつか置いてある。
実家にいたときに思い描いていた一人暮らしの部屋とは大きくかけ離れた今のこの部屋が、私は大好きだった。

高校を卒業してから、私は同級生だった嵐くんと付き合い始めた。
在学中はいつも一緒にいたからあまり意識していなかったけど、3年生になってそれぞれ進路が決まって、一緒にいられる時間が少なくなるとともに気がついた嵐くんへの気持ち。
それは嵐くんも同じだったみたいで、卒業式の日、あの教会で彼から告白されたときは本当に嬉しかった。

お互い違う大学に通うことになって一緒にいる時間が減ってしまったけど、嵐くんはマメに会う予定を作ってくれた。
外に遊びに行くことも勿論、こうやって家でまったり過ごすことも少なくはない。二人でテレビを見たりお話をする。
友達には所帯染みてるとよく言われるけど、私は外で遊ぶよりもこの方が好きだった。

「ジュースでいい?」
「ああ、サンキュ」

とぷとぷとコップに注ぐ。
自分の分も一緒に注いで、またテレビを見る。
確かに恋人同士なのに、部屋に二人っきりなのに、ただ静かにテレビを見てるだけっていうのは、言われてみれば変かもしれない。

高校のときに夫婦みたいだなって言われたのを思い出す。
うん…夫婦って言うか、老夫婦みたいかも。なんて自分で言っておいてなんだけど、お似合いなのかな、私たち。

「…?何笑ってんだ、おまえ」
「え?!ううんなんでもないよ!」

いけない、思わずにやけてしまっていたみたい。
嵐くんは不思議そうに首をかしげたのち、またテレビに集中した。

あと数時間で日付が変わる。近所のお寺で除夜の鐘が撞けるから、そろそろ出掛ける準備をした方がいいかも。
あ、鐘の音が聞こえ初めた。

「ね、鐘撞きに行こうよ」
「ん?…ああ、除夜の鐘か」
「うん。寒いけど一年に一回しかできないことだし、行ってみよ?」
「うーん…」

くい、と嵐くんの服の袖を引っ張る。立ち上がるように促すけど、渋っているみたいだった。
ダメかな?
お寺に行って、除夜の鐘を撞いて、新年の挨拶をして、おみくじを引く。いつもは家族とやっていたことを、嵐くんとしたいと思ったんだけど…。

「今日は、おまえと二人でいたい」
「え?あ!」

ブツン、とテレビが消される。
ああ、まだ途中だったのに。今年は初出場のアーティストも多いから、どっちが勝つのか凄く気になっていたのに。

私が消されてしまったテレビに気を取られているうちに、ぐい、と嵐くんが腕を引っ張った。そのまま彼の胸の中に納まる。
いきなり抱き締められてビックリした私は、思わず嵐くんの胸を押し退けようとしたけどもびくともしない。
背中に回っていた嵐くんの手のひらが、私の背中を撫でる。その手つきがとても優しくて温かくて、私は暴れるのを止めて全身を嵐くんに預けた。

「出掛けないの?」
「ああ。それよりも、したいことがある」
「したいこと?…んっ、あ、嵐くん…?!」

背中を摩っていた大きな手のひらがどんどん降りていって腰を撫で、お尻まで来た。円を描くように撫でられる。
なんだか、ちょっとヤラシイ手つきだ。左右に引っ張ったり寄せたり、なんだか胸を揉まれているみたいな触り方に腰がつい揺れてしまった。
もしかして嵐くん、え、えっち、したい、のかな。

「したいこと、って…んっ」

ぱくりと唇を食べられる。あむあむと食むように口を動かした後、嵐くんの舌が私の唇をノックする。
戸惑いながらもそっと口を開くと、ぬるりと舌が滑り込んできた。
ああ。これは完全にしちゃう気だ。

煩悩を払うために除夜の鐘を撞くはずなのに、その鐘の音を聞きながらするって、なんだか凄く背徳的…。
なんて思っちゃうだけでもう煩悩だらけ、だよね。嫌がってない時点で、私も共犯。

くちゅくちゅと舌をこすり合わせ、必死に答える。嵐くんの舌は熱くて力強くって、ぐっと喉の奥まで差し込まれると口の中を犯されているような錯覚をしてしまう。

「ん、む…んんっ」
「…はっ、手、あげろ」

ぬるんと舌を引き出して舌なめずりする姿に、ドキンと心臓がなった。嵐くんは時々無意識にフェロモンを溢れさせるから性質が悪い。

素直に言われるままに手を上げると、着ていた物を一緒くたに脱がされる。
残ったのはブラジャーだけ。初めての行為じゃないにしろ、恥ずかしいことには変わりない。とっさに両手で隠そうとする前にわし、と胸を掴まれる。手前に指全体で搾り出すように揉まれ、引っ張られる。
出来るだけ力を抑えてくれているのは分かるけど、やっぱり少し痛い。

「んっ…あ、あらしくん、…もうちょっと、優しく…っ」
「ああ…、柔らかくて気持ちいいから、つい」
「や、ああっ」

ブラジャーも外されて直接触られる。嵐くんの手の中で自在に形の変わる自分の胸は、なんだか別の生き物みたい。
嵐くんの手つきは相変わらずだったけど、手のひらに胸の先が擦れてどんどん変な気分になってくる。物足りないような、もっと乱暴にして欲しいような。

「あン…っ」

不意に顔をあげた嵐くんと目が合った。私の顔を見るとにやりと笑い、再び胸に視線を落とす。
すると、唇にしたように胸の先にもパクリと食いついた。

「やっ…あっ、すっちゃや…んあ、」

舌で転がしたり強く吸ったりされると、びくりと腰が揺れてしまう。
背中がぞくぞくして、つい嵐くんの肩を押し返そうとしてしまうけど全然力が入らない。逆に引き寄せるように腕を引いてしまい、思わず手を離した。

「胸だけじゃ、物足りないんか?」
「ちが、そうじゃ…ひゃあっ」
「違わない。おまえ、凄いエロい顔してる」

胸にあった手がするりと下りてきて、スカートの中に入り込んだ。下着の上から敏感なところを触られる。
上下に擦られると、否が応でも腰が震えてしまう。

物足りない。
直接触って欲しい。
もっと強くして欲しい。

それなのに嵐くんの触り方はもどかしくて、もう少しで凄く気持ち良くなれそうなのに、ぎりぎりで焦らされているみたい。

「あ、嵐くん、…嵐くんっ」
「ん…?」
「おねがい…ちゃんと、触って…っ」
「…ダメだ」

すっと嵐くんの手が遠ざかる。その手を縋るように見つめてしまい、とっさに視線を逸らしたけど、中途半端に疼いた身体が許してくれなかった。
身体ごと後ろに引こうとする嵐くんの胸にすがり付いても、嵐くんは全然触ってくれない。
な、何で?何で急に止めちゃうの…?

「あ、あらしくん…」
「なんだ?」
「やめ、ないで」
「どうして?」
「ど、どうしてって、」

え、言わないとダメなの?!
見上げてみると嵐くんはとても悪そうな顔をしていて、なんだか目が野生の獣みたいな、ギラギラしているように見える。
そんな目で見詰められると、お腹の辺りがきゅん、ってしちゃう。まだ直接触ってもらっていないのに、じわりと湿った感触がする。
して欲しい。何も考えられなくなるくらい、ぐちゃぐちゃのどろどろになりたい。

「…気持ちよくなりたい。嵐くんと」

少しだけ背伸びをするように身体を伸ばしてキスをする。今度は私から舌を伸ばして、嵐くんの口の中に進入した。
凄く熱い。ちょん、と嵐くんの舌に触れると、ぐるりと絡め取られた。

「んっ…はん、」
「…ふっ」

もっていかれないように必死になっていると、嵐くんの手が私の手を取った。そのまま下へと導かれて、嵐くんの股間へ押し付けられた。
ズボンの上からでも分かる。
大きくて熱くて、窮屈そうにしている嵐くんの。

「は、…おまえも、してくれ」
「…ん」

一度唇を離してから、嵐くんのズボンを下着ごと降ろす。
途端に姿を現したそれは昂っていて、触れられるのを待っているみたい。期待に満ち溢れて小刻みに震える様子は、私のあそこと同じだった。

そっと手を添えて上下に擦る。
初めて触ったときはどうすればいいのか分からなくて、がくがく揺さぶってしまったのを思い出す。
慌てた顔の嵐くんを見れたのは貴重だったけど、緊張していたとは言えあんな風にしたらやっぱり痛いよね…。失敗をふまえて今度はもっと丁寧に。

「…ぁ、」

先走りの液を指に絡めて、丁寧に、ゆっくり。
でも逆に慎重になりすぎて、力が全然入ってないような気がする。どれくらいなら気持ちいいのかな。

「…嵐くん、ど、どう…?」
「ん、もっと強くても平気だ」
「わ、わかった」
「そう、そこ…こっちも…っ」

教えられるままに触ってゆく。さっきよりも大きくなったかも。
嵐くんはいつもより少しだけ目元が赤くなっていて色っぽい。もっと気持ちよく出来たら、嵐くんのこんな顔、沢山見れるのかな。
ゴクリと喉が鳴る。
ドキドキと煩い心臓を押し退けて、そっと嵐くんのに唇を寄せた。

「…っ」
「ん、あむ…」

途端に嵐くんの身体がはねる。
そのまま口の中に含み、舌で舐めてみる。口の中いっぱいに嵐くんの味が広がって、またお腹がきゅん、とした。




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