0-2 キラキラ眩しくて、手に入らないもの。 それがいま、俺の傍にある。 ぱち、と目が覚めた。 視界には薄い膜みたいなものが張ってあって、だらだらと身体を起こしながら目を擦る。 その動きで、自分が眠っていたのだと気がついた。 空はまだ明るい。 何で寝てしまったのか、何をしていたのか思い出そうと辺りを見渡すと、隣で寝息を立てている小さな温もりに気づいた。 あれ、みなこだ。 …そうだった。 新居がようやく完成したから、みなこを招待したんだった。 塗り立てのペンキの臭いが濃い中、何だか秘密基地みたいね、と笑っていたオマエ。 一通り中を見たあと、ベッドルームでこれからの話とかしてるうちに寝ちゃったのか。 起こさないように髪を撫でる。 サラサラと指の間からこぼれ落ちる髪は柔らかくて気持ちいい。 脱色繰り返して痛んだ俺の髪とは大違い。 「…ん」 おっと、触りすぎたかも。 ゆっくりとベッドから降りて、腕を伸ばして伸びをする。 パキ、と鳴った背中にアイテテなんて呟きながら水道に向かった。 懐かしい夢を見た。 グレーだった世界が一気に極彩色へと塗り替えられて行く夢だった。 鮮やかで、華やかで、まだグレーが残ってて、それさえも彩りに変えてしまう夢。 いいことばかりじゃない。 やなこともいっぱいあったし、やった。 でも、何一つ忘れることのできない大切な夢だった。 ←back 100916 long |