絡まる足枷



卒業式当日。
卒業生達は同級生や後輩、お世話になった先生方と別れを済ませて、三年間通いなれた学校を去ってゆく。名残惜しそうに、または清々して。校舎にはもうほとんど人がいなくなっている時間帯。未だに校舎に残っている僕は、どちらになるだろう。
卒業する前にこっそり作った生徒会室の合鍵を使い、中に入る。入学してすぐに生徒会に入り、二年生になると同時に生徒会長になった。教室と同じくらい、いや、学年が変わって校舎を移動してゆくので、教室以上にすごした時間の長い、生徒会室。

「ほら、入って」

扉の前で不安そう顔をしたまま突っ立っているのは、例の愛しい後輩。
右手を胸の前でぎゅっと握り、左手でスカートを握り締めている。緊張しているのだろうか。優しく笑顔を向けると、ふっと彼女の緊張が和らいだ。

「し、失礼します」

生徒会室というのは、その名前だけで近寄りがたい雰囲気を醸し出しているらしい。生徒会執行部の部員以外は、この部屋を訪れるときは皆一様に畏まっていた。

「ごめんね、こんなに遅くなっちゃって」
「いえ…」

他の部屋にはない、大きくて簡素なソファに座るよう促す。背を向けている間に扉を閉め、鍵を掛けた。たったこれだけで、この部屋には外から干渉できなくなる。
恐る恐るソファの前にたどり着いた彼女はしかし、腰を掛けずにじっとしている。そんな彼女に近づき、肩をぽんと叩いた。途端に身体が跳ね上がる。そんなに、警戒しないでいいのに。
いつものように柔らかく笑って。
柔らかな声で名前を呼んで。
小さな手で、僕に触れて。
夢のように幸せだった時間は、これから僕が壊してしまう。
肩を押しつつソファに座る。彼女は前を向いたまま、じっとしていた。何か考えているのだろうか。それとも、早くこの時間が過ぎ去るように何も考えていないのかも知れない。

「ねえ、みなこさん。僕はもう、今日からこの学園にはいなくなってしまうんだ」
「…はい」
「どう?どんな気持ち?」
「…寂しいです」

ぽつり。聞き様によっては本当に寂しそうにも聞こえる。

「…前にもそういってたよね」

『先輩も、もう卒業ですね』
二月のある日、寂しそうに彼女はそう言った。卒業式まであと一ヶ月もない。あの日は確か、バレンタインデーだった。手作りだというチョコレートは完璧なまでに僕の好みで、幸せそうに渡してくれる彼女は無邪気すぎる。
嬉しかった。本当に嬉しかったのに、チョコレートを渡した相手は僕だけじゃないよね。いつもそうだ。彼女は誰か一人を特別扱いしない。
いつまでこんな気持ちでいればいいのだろう。好きで、好きで好きで仕方がないのに。

「ねえ、今僕が好きだって言ったら、君は受け入れてくれる?」
「え…?」

柔らかな髪に触れる。頭を両手ですくい上げるように持ち、顔をそらせないように固定する。唇が触れそうになるくらいまで顔を近づけて、じっと瞳を覗き込む。

「もう、常に君の傍にはいられない。そのことを考える度に、苦しくて苦しくて仕方がないんだ」

手に入らないのなら、いっそ。
なんて自分勝手な考えだろうと自嘲したが、一番手っ取り早い方法でもある。好きになってもらえないなら、思う存分辱めて、ズタズタにして、誰にも心を開かないようにしてしまえばいい。そうすれば、彼女は一生僕のものになる。
何か言おうとした唇を自分のそれで塞ぐ。くぐもった抗議の声が聞こえた気がしたけど、もう構っていられなかった。

キスをしたまま後ろに押し倒し、背中をぶつけた衝撃で緩んだ唇をこじ開けて舌を捻じ込む。ディープキスなんてしたことなかったけど、考えるまでもなく舌が動いた。口内に張り付いていた舌を無理やり絡めとり、弄る。顎を固定したまま何度も角度を変えて口付け、わざとリップ音を鳴らしてやる。引き剥がそうと僕の両手を掴んでいた小さな手はいつの間にか縋るようにしがみつき、嫌がって逃げていた舌も答えるようになってきた。
…なんで抵抗しないんだ?
舌を捻じ込んだときに噛み付けばいいじゃないか。突き飛ばして罵って泣き喚けば、僕だって思いとどまることができたのに。

「んん、…む」

鼻に掛かった声が耳に届く。途端にズシッとした重みが腰に感じられた。
そろりと片手をスカートの中に潜り込ませると、さすがにビックリしたのか腰を引いて避けようとしたが、それも些細な抵抗にしかならない。下着の上から割れ目に沿って撫でると、そこは多少なりとも濡れていた。再び腰を重たい衝撃が襲う。

「っせんぱい…まって!」
「今まで十分待ったよ。…もう、我慢しないことにしたから」

下着の端から指を潜り込ませて直接触れる。下着の上から触ったときよりもぬるっとした感触に興奮する。見えないまま手探りで弄り、人差し指を埋めてゆく。とても狭い入り口に少しだけ罪悪感もあったが、振り切るように指の付け根まで差し込んだ。

「や、あ、いたい…っ」

痛みからかお腹に力が入り、ぎゅうと指が締め付けられる。抵抗するように関節を動かすと、面白いくらいに身体が跳ねた。
ずっと見たかった光景が、今目の前にある。
僕の腕の中で、僕の指で、感じて善がる彼女。これから彼女は、僕だけのものになる。ぞくぞくと背中を駆け上がる興奮と背徳心に酔いしれる。
一度指を彼女の中から引き抜いて、自身のズボンをくつろげる。すっかり勃起したものを取り出し、下着をずらしただけの小さな入り口に擦り付けた。
生徒会長だった僕と生徒たちの憧れの彼女が学校でこんなことをしているなんて、誰が想像できるだろう。二人とも制服は着たままで、性器だけを晒している。

「いやぁ!ま、まって、せんぱい!!」
「だから、待てないって言ったよ、ねっ」

勢いをつけて押し込む。内壁が拒むように押し返してきたが、腰を掴みなおして根元まで一気に収めた。多少慣らしたとはいえ、指一本では当然ほぐれるわけがない。結合部分からは処女膜が破れたために出血し、赤い血が流れだした。
無理やり押し込んだために自身にも鈍い痛みが走ったが、痛いくらいがいい。

「や、せんぱい、せんぱい…!」

縋るように首に絡み付いてくる両手。酷いことしているのに、何故僕に手を伸ばせるのだろう。
おかしな矛盾を感じながらも、思考を振り払うべくただがむしゃらに腰を進めた。




100828

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