天使のような



私の大好きな人は、とても人気がある。
白くて透き通った肌に、白金に染めた髪がとてもよく似合う。目鼻立ちは通っていて瞳の色素は薄く、光の加減で金色にも見える。表情には憂いを、言動には危うさを。
彼は太陽の光を浴びてキラキラと光輝き、その美しさと儚さを振りまいて歩く、不可侵の天使だった。
天使は、綺麗じゃないといけない。
天使は、誰かのものだといけない。
それなのに天使は、その顔に傷を作り、そして私に擦り寄って生きていた。

「みなこちゃん、みなこちゃん、」
「なあに?琉夏くん」

お昼休み、私の持ってきたお弁当をあっという間に平らげた彼は、お腹がいっぱいになって眠たくなったのか、甘えるように私の肩に頭を擦り付ける。
お弁当のおかずには必ずエビフライ。
ホットケーキと魚が好きだと言っていたのに、お弁当にはエビフライが無いと不機嫌になる彼は、気難しいのかお子様なのか。…多分、後者。
ここは屋上で、今はお昼休みで、私達のようにお弁当を広げている生徒は沢山いる。
そんな中でも琉夏くんは私に甘えるし、私も彼の好きなようにさせていた。

「眠い。膝枕、して?」
「もう、しょうがないなぁ」

本当はそんなこと、ちっとも思ってないくせに。
私はお弁当箱を片付けると、はい、と膝を差し出した。やった、と呟いてからゴロンと寝転がる琉夏くん。キラキラの髪が眩しかったけど、その髪を撫でるのは私の特権。
たくさんの羨望の眼差しを浴びる、私と琉夏くん。ダメダメ、にやけちゃ。でもやっぱり優越感。

「ねーみなこちゃん」
「なあに?」
「…ん、やっぱなんでもない」

ぐずる子供のように、ぐりぐりと膝に頭を押し付ける。
こら、さすがにダメでしょそれは。
くすぐったくて身を引いたら、すがるように伸ばされる手。どんなに逃げようと隠れようと、私にだけ伸ばされるそれは、絡めとるように私の背中に回った。

「やだ、琉夏くん…っ、くすぐったいよ」
「ごめん。でも、逃げないで」

少しだけ体を起こして抱きついた琉夏くんが、私のお腹に顔を埋めた。
やだ、お腹鳴ったらどうしよう。
なんて検討違いなことを考えながら、女の子の悲鳴を聞く。ふふ、きもちいい。
呆れたように、でも安心させるように逃げないよ、と囁きながら琉夏くんの背中を撫でて、私は天使にも負けない笑顔を浮かべた。




100810

xxx

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